シルク印刷は、企業のノベルティやオリジナルグッズなど幅広い製品づくりに活用できる印刷方法です。企業担当者の中には「シルク印刷の特徴を詳しく知りたい」「シルク印刷でオリジナルグッズを制作したい」と考えている方もいるでしょう。
本記事では、シルク印刷の特徴やオフセット印刷との違い、メリット・デメリット、活用事例を解説します。自社の製品やノベルティの制作にシルク印刷を取り入れて、マーケティングを強化しましょう。
シルク印刷とは

シルク印刷とは、色ごとに作成したスクリーン(版)に専用のスキージ(ヘラ)を用いて、インキを延ばしながら着色する印刷方法です。
スクリーンの表面には細かい網目の布があり、印刷したい部分にインキが通過する仕組みです。シルク印刷が登場した当時は絹(シルク)の布を使用していたため、シルク印刷またはシルクスクリーン印刷と呼ばれています。
インキの発色が良いため、多くの人の目を惹きつける鮮やかな印刷物の制作が可能です。
オフセット印刷との違い
シルク印刷とオフセット印刷はどちらも版を作成して印刷する手法ですが、仕組みや得意分野に違いがあります。シルク印刷とオフセット印刷の違いは、以下のとおりです。
項目 | シルク印刷 | オフセット印刷 |
仕組み | スクリーンを通し直接インキを付けて印刷 | 平版から専用のローラーにインキを転写してから印刷 |
得意分野 | 鮮やかな色の再現や広い範囲のべた塗り | 写真など複雑な色彩やグラデーション |
例えば、キーカラーを用いたノベルティの制作であれば、発色が美しいシルク印刷が向いています。一方、高解像度の印刷物を制作する場合は、細かい色彩表現が得意なオフセット印刷の方がよいでしょう。
それぞれ得意分野が異なるため、印刷物や目的に応じて選択する必要があります。

シルク印刷の工程
シルク印刷の工程を理解しておくと、その特徴やほかの印刷方法との違いがより明確になります。一般的にシルク印刷は以下の流れで進みます。
工程 | 概要 |
1.版下作成 | ・印刷したいデザインを用意し、データ化する ・Adobe IllustratorやAdobe Photoshopなどのデザインソフトを用いる場合が多い |
2.スクリーン作成 | ・データを特殊な樹脂フィルムに出力し、紫外線照射で硬化する ・色が複数ある場合は、色の数だけスクリーンが必要 |
3.印刷 | ・スクリーンにインキを乗せ、スキージ(ヘラ)で延ばす ・デザインの面積や塗りの厚さによって、スキージを動かす速度や圧力を変化させる |
4.乾燥 | ・インキを乾燥させて仕上げる ・インキの乾燥は、乾燥用の機械を使用するか、UVインキを用いて紫外線で硬化させる |
シルク印刷は、紙や布だけでなく、ガラス・金属などにも印刷できるのが特徴です。また、平面はもちろん曲面にも印刷できます。
シルク印刷を活用するメリット

シルク印刷には、以下のようなメリットがあります。
- さまざまな素材に印刷できる
- 耐久性・耐水性・耐候性に優れている
- インキの色を鮮やかに再現できる
メリットを知ると、シルク印刷の効果的な活用方法を検討しやすくなります。それぞれ詳しくみていきましょう。
さまざまな素材に印刷できる
シルク印刷は印刷物の素材を選ばないため、多彩なアイデアを活かしたオリジナルグッズが制作できます。具体的なグッズの例は、以下のとおりです。
- ノベルティシール
- ポリエステル製エコバッグ
- クリアファイル
- Tシャツ
- タンブラー
- コースター
- 酒パッケージ
シールやエコバッグ、クリアファイルなどに企業のロゴを印刷すれば、自社のアピールにつながる魅力的なグッズになるでしょう。金属の曲面にも綺麗に印刷できるため、タンブラーの制作も可能です。
また、インキを厚塗りできる特徴をデザインに活かすことで、他社製品との差別化も図れます。

耐久性・耐水性・耐候性に優れている
シルク印刷はインキを厚く塗り固めるため、耐久性・耐水性・耐候性に強みがあります。
例えば、衣服のデザインにシルク印刷を使用すると、洗濯による色あせがしにくく、長年着用できるようになるのがメリットです。また、風雨や紫外線に強いため、ヘルメット・車に貼るステッカーや、看板・表札などの耐候性が求められる製品にも向いています。
特に、企業のグッズは繰り返し消費者の目に触れることで広告効果が向上するので、シルク印刷の活用がおすすめです。
インキの色を鮮やかに再現できる
シルク印刷はインキを厚く塗るため、デザインの色味がくっきり表現できます。下地の色に影響を受けず、鮮やかで濃い色を再現できる点が魅力です。
また、1色ごとにインキを作るため、イメージどおりの色を出したい場合にも向いています。金・銀や蛍光など通常のインキでは出せない特色を使用する際にも便利です。
色味を正確に再現するためには、印刷会社に色見本を提出するのがよいでしょう。


シルク印刷を活用するデメリット

シルク印刷には、以下のようなデメリットもあります。
- 小ロットだとコストが高くなる
- グラデーションや細かい表現に向かない
- 依頼から納品まで時間がかかりやすい
デメリットを把握すると、事前に注意すべきポイントを明確化でき、失敗を防げるようになります。それぞれ詳しくみていきましょう。
小ロットだとコストが高くなる
シルク印刷を活用する場合、ロット数にかかわらず、スクリーンの作成費用がかかります。そのため、印刷にかかるコストは小ロットであるほど割高になります。
また、印刷に使用する色が増えると、色の数だけスクリーンが必要になる点にも注意が必要です。スクリーンは一度作ると繰り返し使えるので、大ロット印刷に向いています。
なお、シルク印刷は手動や自動など印刷機や印刷方式によって経済ロットが変わってくるため、印刷会社への事前確認が必要です。例えば、千枚を大ロットとする印刷会社もあれば、1万枚を大ロットとする印刷会社もあります。

グラデーションや細かい表現に向かない
シルク印刷は1色ごとにインキをスキージで塗り広げる印刷方式のため、グラデーションや多色刷りには向いていません。色ごとにスクリーンを作ることから、多くの色を重ねると位置ズレが生じる可能性もあります。
また、シルク印刷は繊細な表現が苦手で、細い線や小さな文字は「つぶれ」や「かすれ」を起こしやすい性質があります。つぶれやかすれを起こさないためには、デザインの段階から以下のような対策が必要です。
- 線と線の間を空ける
- 大きめのフォントにする
- 線を太くする
複雑過ぎるデザインの場合は、オフセット印刷などほかの方法を選ぶ方がよいでしょう。
依頼から納品まで時間がかかりやすい
シルク印刷は、ほかの印刷方法に比べて納期が長くなる傾向があります。スクリーンの作成やインキの定着など独自の工程があるためです。
シルク印刷を活用する場合は、印刷物が必要な日から逆算し、余裕をもって依頼しましょう。一般的には、依頼から納品まで1週間以上かかる場合が多い傾向にあります。
ただし、納期は印刷会社やデザインの複雑さといった条件次第で変わります。

シルク印刷の活用事例

シルク印刷は、アイディア次第で印刷物の見栄えや機能を大きく向上できます。
例えば、シルク印刷の厚盛りという手法を使った「擬似ラインストーン」を用いると、パッケージやシールを美しく装飾できます。印刷物にラグジュアリーな印象を持たせたい場合に効果的です。
同じく厚盛りを活かして、点字や点文字の印刷といったユニバーサルデザインも実現できます。
印刷会社によって対応可能な範囲が異なるため、実績のある会社に相談するとよいでしょう。
まとめ

シルク印刷を上手く活用すると、オフセット印刷とは異なる味わいの製品やグッズを制作できます。色鮮やかなノベルティや耐久性に優れたオリジナルグッズを印刷したい場合におすすめです。
一方で、小ロットだとコストが割高で、細かい色彩表現がしにくいといったデメリットがあります。シルク印刷の特徴を理解した上で、自社のブランディングを強化できる印刷物を制作しましょう。