印刷物の制作において自社の予算に合った印刷会社を選ぶには、見積もり依頼を適切に行う必要があります。企業担当者の中には「あらかじめ何を決めておけばよいか」「全体の流れを知りたい」など、疑問や悩みを持っている方もいるでしょう。
この記事では、印刷物の見積もり依頼の際に決めておくべきポイント、依頼のやり方、注意点などをわかりやすく解説します。印刷物の制作を担当されている方は、ぜひ参考にしてください。
印刷会社に見積もり依頼をする際に決めておくべきポイント
印刷物の見積もり依頼を行う際に決めておくべきポイントは、以下の5点です。
- 制作する印刷物と使用目的
- 印刷物の主な仕様
- 予算
- 納期・スケジュール
- 仕上がりイメージ
できる限り具体的に決めておけば、印刷会社との打ち合わせや依頼がスムーズに進むでしょう。もっとも、見積もり依頼の前にすべての項目がすぐ決まるとは限りません。決まっていない部分や相談したい事を事前にチェックしておくことで印刷会社から提案を受けるることもできます。特に、デザインのイメージや印刷の仕様に曖昧な部分がある場合には、印刷会社に相談した方が考えがまとまりやすくなります。
それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。
制作する印刷物と使用目的
見積もり依頼のときには、シールやステッカー、パンフレット、名刺など印刷物の種類はもちろん、使用目的を明確に伝えるようにしましょう。例えば、単にシールと伝えるのではなく、POPシールなのかパッケージ用のシールなのかなどを明示すると、印刷会社とのやりとりがスムーズになります。
また、商品やサービスに使う印刷物の場合は、そのターゲットもできるだけ細かく伝えましょう。場合によっては、より良い仕様やデザイン、印刷方法の提案を受けられる可能性があります。
印刷物の主な仕様
印刷物の見積もり依頼時には、印刷物に関する仕様を決めておくことが大切です。
決めておくべき主な仕様を次の表にまとめました。
項目 | 詳細 |
サイズ | ・縦と横の仕上がりサイズの目安 ・A4などの決まったサイズか、オリジナルかどうかによって料金が異なる場合がある ・箱などの立体物の場合は、中に入れる製品のサイズも伝える必要がある |
素材 | ・印刷をする紙やフィルムなどの素材の種類によって値段が変わる ・紙であればミラーコート紙やアート紙、フィルムであれば合成紙が比較的安価である ・デザインや耐久性など、重視する点によって使い分ける |
色 | ・単色刷りや2色刷り、フルカラー(CMYK)印刷、特色印刷などがある ・写真やイラストなど多色のデザインの場合はフルカラー印刷、シンプルなデザインやコストを抑えたい場合は単色刷りや2色刷りがよい |
形状 | ・例えばシールであれば、四角と円形、楕円など、仕上がりの形状はさまざま ・複雑な形状だと、加工の都合でコストがかかる場合がある |
製本方法 | ・パンフレットなどページ数があるものは製本加工が必要になる ・代表例として、中央を針金で止めて半分に折る中綴じ、糊で背表紙を作る無線綴じがある ・中綴じの方がコストは安く済むが、ページ数の多い印刷物には不向き |
加工の有無 | ・表面を保護する「ラミネート加工」や高級感の出る「箔押し」などさまざまな加工がある ・加工の有無や加工の種類により費用も変わる |
内職作業の有無 | ・印刷以外で納品までに必要な作業を依頼する場合には、追加料金がかかる可能性がある ・例えば、印刷物のパッケージングや選別、貼り付け、手折りなどがあげられる |
納品場所 | ・納品場所によって送料や梱包の形態が変わるので、見積もり時に伝える必要がある ・例えば、納品場所が複数ある場合や離島・海外に送る場合などがあげられる |
もしわからない点があれば、見積もりの段階で印刷会社に質問をしましょう。
予算
印刷にかけられる予算は、見積もりの前に決めておく方がスムーズです。予算の目安があると、印刷部数や印刷方法、加工の有無などさまざまな要素を決めやすくなります。
大ロットの場合は、印刷版を用いる「オフセット印刷」と呼ばれる印刷方法を選ぶと、比較的安価に印刷できます。一方、小ロットの場合には印刷版を用いない「オンデマンド印刷(デジタル印刷)」の方がコストが安く済むでしょう。
なお、見積もり自体の費用は、多くの印刷会社が基本的に無料としています。ただし、サンプルなどが有料の場合もあるため、心配であれば事前に確認すると安心です。
納期・スケジュール
印刷物の見積もりの際には、印刷物がいつ必要になるか、スケジュールを明確にする必要があります。納期はおおまかでもかまいませんが、余裕をもって長めに考えた方がよいでしょう。納期が短いとその分費用が高額になる場合もあるため、注意が必要です。印刷物を使用する日時が決まっている場合は最初に伝えておきましょう。
また、事前に印刷物の色のイメージをすり合わせる「色校正」を行うと、その分の時間がかかるものの、仕上がりの際にイメージと合わずに刷り直しといった事態を避けられます。大量印刷が必要でデザイン性が高い印刷物の場合には、色校正の工程を入れるかどうかも検討しましょう。
仕上がりイメージ
見積もりの際には、印刷用のデータまたはイラストなどを提出すると印刷物のイメージが伝わりやすくなります。
入稿は基本的に、完全データ(そのまま印刷可能なデータ)を使用します。使用するデータは、Adobe Illustratorのai形式やPDF、jpgなどが一般的です。対応できるデータは印刷会社によって変わるため、データがある場合は使用できるかどうか事前に相談しましょう。
また、サンプルやプレゼンで制作した製品があれば、それらを提出するとイメージが更に伝わりやすくなります。提出物の返却をしてもらいたい場合には、要返却の旨を伝えておくことが重要です。
もし自社でデザインの用意が難しいなら、デザイン・版下作成から対応できる印刷会社を選び、見積もり時に併せて依頼しましょう。
印刷会社への見積もり依頼のやり方
印刷会社に見積もり依頼に必要な情報が揃ったら、実際に見積もり依頼を出します。依頼から発注までの基本的な流れは、下記のとおりです。
- 印刷会社に問い合わせをする
- 担当者と打ち合わせを行う
- 見積書が届く
- 印刷会社と契約して発注する
ただし、上記はあくまで基本的な例であり、印刷会社によって流れが異なる場合もあります。それぞれ詳しくみていきましょう。
1.印刷会社に問い合わせをする
まず、印刷会社に問い合わせをし、見積もり依頼がしたい旨を伝えます。
問い合わせ方法は、印刷会社によって違います。従来は直接窓口、電話、FAXが主流でした。しかし、ネット環境の発達した近年では、問い合わせ方法にメールやお問い合わせフォームを使う印刷会社が増えています。
問い合わせの際には、前述した印刷物の仕様などを細かく伝えましょう。既にデザインが仕上がっているなら、問い合わせ時に添付すると見積もりの参考になります。
2.担当者と打ち合わせを行う
見積もり依頼をすると、印刷会社から折り返し連絡が入ります。この時、見積もりに必要な情報を改めて伝えつつ、詳細なすり合わせを行いましょう。印刷会社はヒアリングを行った上で、見積もりを作成します。
打ち合わせは、対面・電話・メールなど印刷会社によってさまざまです。最近ではZoomやTeamsなどを用いて遠隔の相談が可能な場合もあり、遠方からでも利用がしやすくなっています。
3.見積書が届く
打ち合わせで詳細が決まったら、後日、印刷会社から見積書が届きます。この時、疑問点を曖昧なまま済ませたり質問を先延ばししたりすると、後々トラブルにつながりかねません。疑問があればその場ですぐに解決しましょう。
また、見積もりに納得がいかない場合には再度相談し、仕様や費用などの見直しを図る必要があります。
4.印刷会社と契約して発注する
見積もりに問題がなければ、契約を交わして発注を行い、入稿します。契約時には、改めて以下のような点を確認しておきましょう。
- 入稿方法(データ入稿 ・ 郵送など)
- 納期・スケジュール
- 印刷料金・支払い方法
- できあがった印刷物の納品方法(郵送・印刷会社で受け取りなど)
再確認ができたら手元にメモなどで控えておくと、いざというときに役立ちます。発注後には、印刷物の制作が進んでいきます。
印刷会社に見積もり依頼をする際の注意点
印刷会社に発注をする際には、必ず数社に見積もり依頼(相見積もり)をしましょう。複数の印刷会社の見積もりを比較すれば、金額や仕様、納期など、より良い条件を選べるからです。依頼先が多過ぎると比較が大変なため、2〜3社程度が目安です。
複数の印刷会社に見積もり依頼をするときは、次の3点に注意する必要があります。
- 同じ条件で見積もり依頼をする
- ほかの印刷会社にも見積もり依頼をしていると伝える
- 見積もりの結果、注文をしないと決めた印刷会社には断りを入れる
同じ条件で依頼をしないと、当然出てくる結果も変わってしまいます。また、他社にも見積もり依頼をしていると知らせていないと、印刷会社が依頼の時点で仮準備を始めてしまうかもしれません。
さらに、見積もりのあとに返答がないと、印刷会社がずっと待ち続けてしまう可能性もあります。不要なトラブルを避けるためにも、断りの連絡を入れる方が望ましいでしょう。
まとめ
見積もり依頼をする際には、制作する印刷物の使用や予算、仕上がりイメージなどを決めておく必要があります。もし自社でわからない点や迷っている部分などがあれば、印刷会社に相談しながらまとめることが、見積もり依頼を上手く行うポイントです。
本記事を参考に印刷会社と上手くコミュニケーションを図り、予算内で自社のイメージに合った印刷物を制作しましょう。