パッケージのデザインは、消費者の購買意欲に大きく影響し、商品の売上を左右する重要な要素です。そのため、パッケージリニューアルは単なるデザイン変更ではなく、ブランド戦略の一環として取り組む必要があります。
本記事では、パッケージリニューアルのメリット・デメリットや失敗を防ぐコツ、成功事例をわかりやすく解説します。
リニューアルを通じて自社商品の競争力を強化し、長期的な売上の向上を目指しましょう。
パッケージリニューアルのメリット

パッケージリニューアルにより得られる主なメリットには、以下があげられます。
- 新規顧客の開拓やブランディング強化につながる
- ニーズやトレンドの変化に対応できる
メリットを理解すると、リニューアルの適切なタイミングや方針がイメージできるようになります。それぞれ詳しくみていきましょう。
新規顧客の開拓やブランディング強化につながる
パッケージリニューアルにより、商品の新規顧客の確保やブランド認知度の向上につながります。
似た商品が店頭に並んでいる場合、顧客はパッケージを一目みて商品を決定する傾向があります。長期間同じパッケージのままだと、次第に新鮮さが失われ、競合他社の商品に埋もれてしまいかねません。
また、パッケージリニューアルの際は、これまでと異なるデザイナーや印刷会社の話を聞くことで、自社を新たな視点から捉え直すチャンスにもなります。そのため、企業の成長に向けたチャレンジの一手段として位置付けられます。
ニーズやトレンドの変化に対応できる
パッケージリニューアルによって、消費者のニーズやトレンドの変化に対応できるため、売上の向上が期待できます。
例えば、健康志向の高まりに合わせて「糖質オフ」や「減塩」などの訴求を前面に出したデザインに変更すると、購入層が広がる可能性があります。
また、季節限定パッケージの導入によってSNSで話題となり、認知度が向上するケースも珍しくありません。
そのほか、近年ではSDGsへの対応やユニバーサルデザインの導入もトレンドとなっており、企業価値向上につながる選択肢のひとつです。


パッケージリニューアルのデメリット

パッケージリニューアルで懸念されるデメリットには、以下があげられます。
- 顧客離れを招く可能性がある
- 生産時のコストや時間に影響する
事前にデメリットを把握すれば、リニューアルの失敗ややり直しを防げるようになります。それぞれ詳しく解説します。
顧客離れを招く可能性がある
パッケージリニューアルにより、従来の顧客層からの信頼が失われて、売上の減少につながる場合があります。リピート購入をしている顧客は、現在のブランディングやパッケージに価値を感じている可能性が高いためです。
また、パッケージを頻繁に変更してばかりだと、商品やブランドイメージが新規顧客の記憶に定着しにくくなります。
リニューアルの際には、ブランドや商品の価値が失われないような工夫が必要です。
一例として、有名な「牛乳石鹸」の赤い箱に牛のイラストのパッケージは、気づきにくいリニューアルを重ねています。長年ほとんど変わらない牛のデザインを維持しつつ、ロゴやイラストの質感が少しずつ改良されてきました。
こうした方法は、既存顧客の安心感を保ちつつ、時代に合わせて印象をアップデートする好例です。
参照:赤箱のススメ「実はこんなに変わってる! 赤箱パッケージに歴史あり。」
生産時のコストや時間に影響する
パッケージリニューアルは、シールやPOPの変更とは異なり、生産体制全体の見直しが必要になります。印刷版や資材の切り替え、生産ラインの調整などがその一例です。
リニューアルに失敗した場合、元のパッケージに戻すための再印刷やマーケティング費用の追加など、多大なコストが発生します。そのため、一部の店舗や限定商品でテスト販売を行い、反応を見ながら導入するといったリスクを抑える工夫が効果的です。
また、リニューアルには旧パッケージの余剰在庫と廃棄のリスクがあり、大量廃棄はコスト増加に直結します。失敗を防ぐためには、旧パッケージの在庫を使い切るタイミングを踏まえながら、無駄のない最適なロット数や納品スケジュールを決めることが重要です。
パッケージリニューアルの失敗を防ぐコツ

パッケージリニューアルの失敗を防ぐコツには、以下があります。
- 目的やコンセプトを明確にする
- 変更しない要素を慎重に決める
- ターゲットと競合他社を意識してリデザインする
- お知らせやキャンペーンで広告効果を得る
コツを押さえてリニューアルの方針やデザインを考えれば、より高いマーケティング効果が期待できます。それぞれ詳しくみていきましょう。
目的やコンセプトを明確にする
まずはパッケージリニューアルの目的を明確にして、コンセプトを決める必要があります。目的が曖昧だと期待した成果を得られず、場合によっては売上が落ちかねません。
リニューアルの目的やコンセプトの例としては、以下があげられます。
- 定期的なリニューアルで売上の確保・向上を目指す
- ターゲット変更にともない訴求の仕方を見直す
- 商品のブランドイメージを刷新する
- 環境対応や安全性などの新たな価値を打ちだす
目的やコンセプトから逆算して、どのような見直しやデザインが必要かを考える姿勢が重要です。
変更しない要素を慎重に決める
パッケージリニューアルの際には、自社やブランドならではの価値を考え、あえて変更しない要素を慎重に見極めましょう。既存顧客から評価されている部分を変えてしまうと、かえってパッケージの魅力が失われて、顧客離れを招きます。
例えば、以下のような要素は、変更にともない大きな影響が出る場合があります。
- 自社のキャラクターやロゴのデザイン
- 自社や商品のイメージカラー
- キャッチコピー
- ブランドメッセージ
実際の顧客やモニターの声、過去の売上データなどを確認し、自社や商品の独自性を改めて定義すると効果的です。
ターゲットと競合他社を意識してリデザインする
パッケージの見た目をリデザインする際には、ターゲットを意識しながら、競合他社とどう差別化できるかを言語化する必要があります。
一例として、若年層の顧客を獲得したい場合は、モノトーンにアクセントカラーを加えたシンプルでSNS向きのデザインへ変更する、などがあげられます。EC販売を拡大したい場合は、サムネイルで映える大胆な配色や大きなロゴにする方法がおすすめです。
また、単に印刷するだけでなく、「箔押し加工」や「エンボス加工」といった特殊加工の手法を用いると、競合他社と差別化しやすくなります。
必要に応じて、実績の豊富なデザイン会社や印刷会社に相談するとよいでしょう。


お知らせやキャンペーンで広告効果を得る
パッケージリニューアルをする場合、デザインへのこだわりだけでなく、どのように消費者へPRするかの戦略が重要です。
外部に広く知らせる手段としては、SNSでの発信やプレスリリースなどがあげられます。特に、SNSでのハッシュタグを活用した投稿キャンペーンなどは、手軽にできて大きな効果が期待できます。
発表する際には、変更の考え方をわかりやすく説明するだけでなく、自社として大事にしている「変えない部分」を明確に打ちだしましょう。
そのほか、パッケージにQRコードを印刷し、ブランドサイトやキャンペーンサイトへ誘導して顧客の関心を高める手法も有効です。
パッケージリニューアルの成功事例

パッケージリニューアルの成功事例として、王子ネピア株式会社の「鼻セレブ」のリデザインとキャンペーンを紹介します。
2004年には「ネピアモイスチャーティシュ」の名称で、パッケージもロゴのみのシンプルなものでした。しかし、商品の知名度が低く、売上の低迷が大きな課題となっていました。
そこで、保湿ティッシュという独自の価値を意識して、商品の名称を「鼻セレブ」に変更。パッケージもふわふわ系の動物をコンセプトにしたものに変更した結果、売上は10倍に伸びました。
なお、最近でもボックスタイプには「FSC®認証紙」を採用し、環境への配慮を打ちだすなど、定期的なリニューアルを続けています。
参照:nepia公式ファンサイト「鼻セレブ」
参照:PR TIMES「『ネピア 鼻セレブティシュ』シリーズブランド生誕20周年に先立ちデザインリニューアル」


まとめ

パッケージリニューアルにより、新たな顧客の獲得やトレンドへの対応が可能となり、売上の向上が期待できます。リニューアルする際には、目的やコンセプトを明確にした上で、自社ならではの価値が伝わるデザインを検討する必要があります。
自社でノウハウや経験が不足している場合には、実績のあるデザイン会社や印刷会社に相談するとよいでしょう。
