FSC®認証印刷とは、森林破壊をはじめとする環境問題に対応した材料を用いる印刷のことです。印刷物にFSC認証ラベル(マーク)を取り入れれば、自社の環境問題に向き合う姿勢をアピールできます。
本記事では、FSC®認証印刷の概要やラベル・用紙の特徴、メリット、印刷会社への依頼方法などをわかりやすく解説します。環境にやさしい印刷物の制作を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
※本記事は2025年3月時点の公表情報をもとに執筆しています。最新の制度の内容は、FSC及びFSCジャパンの公式サイトを併せてご確認ください。
FSC®認証制度とは

FSC®認証制度とは、森林保護と持続可能な社会のために適切な管理を行う組織を認証する制度です。20世紀後半に環境保護の運動が地球規模で広がった頃に誕生した、NPO団体「FSC」(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)が管轄しています。
FSCの読み方はそのまま「エフエスシー」です。日本では「FSCジャパン」が窓口になっています。
FSCは「FSC®認証」の規格を定め、認証の取得を希望する企業や団体に「FSC®認証」を発行しています。FSC®認証の発行は、独立した第三者機関による規格審査の通過が条件です。
認証済みを意味するFSC®認証ラベル(マーク)は、身近な商品にも広く使用されています。飲料の紙パックやお菓子の箱、紙袋、ノート、コピー用紙などにおいて、一度はラベルを目にしたことがあるのではないでしょうか。
なお、FSC®認証には「森林の管理」(FM認証)と「加工・流通過程の管理」(CoC認証)の2種類があります。FSC®認証制度の活用により、適切な管理体制で生産された木材や紙製品が消費者のもとに届けられています。
FSC公式:「FSC(Forest Stewardship Council)」
FSCジャパン公式:「FSCジャパン」
FSC®認証印刷の基礎知識

FSC®認証印刷とは、認証を受けた印刷会社がFSC®認証紙を使用して印刷を行うことです。
FSC®認証紙は、認証を受けた森林の木材から製造された用紙を指します。FSC®認証紙の製造には、厳しい審査を通過した生産施設や企業のみが携わり、認証を受けていない木材などの混入を防いでいます。
FSC®認証紙の使用自体はどの企業でも可能です。しかし、FSC®認証ラベル(マーク)の使用や「FSC®認証紙を使用している」などの記載は、認証取得済みの印刷会社に依頼をしなければなりません。
FSC®認証を受けるのは森林の管理者や木材の製造・加工を行う企業であり、印刷物の制作を依頼する企業は認証不要です。
なお、FSC®認証製品に付けるラベルのほかに、コーポレートサイトやカタログで認証製品の宣伝などに使用する「FSCトレードマーク」もあります。FSC®認証を得ていなくても、「FSCジャパン」に申請して許可を得れば自社のサイトや印刷物に使用可能です。
FSC®認証紙と再生紙の違い
環境保護といえば、再生紙もよく知られています。FSC®認証紙と再生紙の違いは、原材料と品質の差です。
それぞれの特徴をまとめると、以下のとおりです。
用紙 | 特徴 |
FSC®認証紙 | ・FSC®認証を受けた森林から伐採した木材が使用され、同認証を受けた企業・団体のみが関わる中で作られた紙 ・品質や紙の製造過程は認証を受けていない紙と変わらない |
再生紙 | ・回収された古紙により作られたパルプ(紙の原料)を含む紙 ・古紙のため、リサイクルのたびに品質が劣化していく |
いずれも森林保護が目的とされていますが、どちらを選択するかは用途次第です。
品質を重視するなら、FSC®認証紙の方がよいでしょう。再生紙の場合は、廃棄物の削減といった古紙ならではの特徴をアピールできます。
FSC®認証ラベル(マーク)の種類
FSC®認証紙を使った製品に使用できるラベル(マーク)は3種類あります。
ラベル(マーク)名 | 特徴 |
FSC100%(ピュア) | ・FSC®認証森林の木材を原料の100%とする製品に付ける |
FSCミックス | ・FSC®認証を受けている原材料を複数使用している製品に付ける ・ラベルの使用には原材料の割合などが規格に沿っていることが求められる |
FSCリサイクル | ・FSCの認証規格に沿った回収原材料のみ使用する製品に付ける ・紙など木材製品の場合、消費者から回収した原材料が70%以上であるときに使用可能 |
これらのラベルは、環境保全に取り組む企業のブランディングにも役立ちます。
FSC®認証印刷の活用例
FSC®認証印刷は、さまざまな印刷物に活用できます。主な印刷物の例をあげると、以下のとおりです。
- 封筒・便せん
- 名刺
- パンフレットやリーフレット
- 会社案内
- 企業向け挨拶状
- ポストカード
- カレンダー
既存の印刷物も素材をFSC®認証紙に変更すれば、FSC®認証ラベルを使用可能です。変更したい場合は、印刷会社に相談しましょう。FSC®認証紙は一般的な紙と同様の製造過程を辿るため、通常の紙と変わりなく使用できます。
FSC®認証紙の種類には、上質紙・コート紙・マット紙など多くの紙が用意されています。ただし、印刷会社によっては使用できない紙や制作の受付をしていない印刷物もあるため、事前に確認が必要です。
FSC®認証を受けている印刷会社
FSC®認証印刷を行っている印刷会社は、すべてFSC®認証を受けています。各印刷会社は認証時に固有のライセンス番号を取得しており、FSC®認証印刷を行う際には取得したライセンス番号をラベルに記載します。
発注先の印刷会社がFSC®認証を得ているかどうか確かめたい場合は、印刷会社のホームページを確認しましょう。
企業案内や事業内容、印刷事例などのページに、認証取得企業である旨が記載されている場合があります。問い合わせフォームなどを通じて連絡するのも1つの方法です。
また、FSC®認証を受けている印刷会社の一覧を見たい場合は「FSC®認証ダッシュボード」(FSC Certificate Public Dashboard)を利用しましょう。サイトは英語で書かれており、日本の会社は「Country / Area」で「Japan」にチェックをすると表示されます。
なお、上記のダッシュボードは公式データベースの不具合にともなう「暫定的な代替ツール」であり、今後変更される可能性がある点にご注意ください。
参照:FSC認証ダッシュボード「FSC CERTIFICATE PUBLIC DASHBOARD」
参照:FSCジャパン「FSC認証データベースの不具合と暫定的な代替ツールについて」
FSC®認証印刷を採用するメリット

FSC®認証印刷を採用する主なメリットは、以下の2点です。
- SDGs(持続可能な開発目標)に貢献する実績ができる
- 環境にやさしい企業として認知されやすくなる
FSC®認証印刷を使用すると、SDGsの目標の1つ「陸の豊かさも守ろう」をはじめ、14の目標と40種類の達成基準に貢献できます。生産に関わる組織はFSC®認証を受けた生産者や企業ばかりのため、違法伐採された材質が印刷物に紛れ込むリスクも減らせます。
また、FSC®認証印刷の導入により、「環境に配慮している企業である」と顧客から認知されやすくなり、企業のイメージ向上やブランディングにもつながるでしょう。
顧客の目に触れやすい制作物にFSC®認証印刷を活用すると、ブランディング効果はさらに向上します。


FSC®認証印刷の依頼時に知っておきたいポイント

FSC®認証印刷の依頼時には、FSC®認証ラベル(マーク)の色や形を選択できます。
ラベルの標準色には緑・黒・白の3種類があり、これらの色以外は「明瞭なコントラスト」があれば使用可能です。ラベルの形は縦型と横型の2種類で、すべての文字が判読可能なサイズで印刷する必要があります。
また、印刷物のデザインを自社で行う場合、ラベルの正式なデータは使用できないため、印刷会社のダミーデータを入手して使いましょう。ダミーデータは印刷時に正式なデータと差し替えられます。
FSC®認証ラベルを配置するルールには、例えば以下のようなものがあります。
- ラベルの比率や形を変更してはならない
- ラベル内の記載事項の変更や社名・ブランド名の追記はできない
- 模様のある背景がロゴデザインに干渉してはならない
- ラベルの周囲には、ラベルに記載しているFSCの文字の縦1つ分以上「余白」を取る
FSC®認証印刷にはこのほかにも多くのルールがあり、デザインにあたっては各ルールを厳守する必要があります。自社ですべてに対応するのは難しいため、詳細は印刷会社に確認・相談しましょう。
参照:FSCジャパン「認証取得者のための商標クイックガイド」
まとめ

FSC®認証印刷は、環境問題に取り組む企業であるといったブランディングに役立つ印刷方法です。ラベルの配置や使用方法には厳しいルールがあるため、印刷物の制作にあたって疑問があれば、対応可能な印刷会社に相談するとよいでしょう。
今回の記事で紹介したFSC®認証の基礎知識や依頼方法を理解して、自社の成長につながる印刷物を制作しましょう。