抗菌印刷とは?メリット・種類・導入のポイントをわかりやすく解説

抗菌印刷とは

抗菌印刷とは、印刷物に抗菌剤入りのニスかフィルムをコーティングし、表面を抗菌する加工のことです。企業が抗菌印刷を導入すると、自社の印刷物の安全性を確保できるだけでなく、企業イメージ向上につながります。

本記事では、抗菌印刷の種類や活用される場面、メリット、導入のポイントなどをわかりやすく解説します。

本記事をもとに抗菌印刷が必要かどうかを判断した上で、導入の準備をスムーズに進めましょう。

目次

抗菌印刷とは

抗菌印刷イメージ

抗菌印刷とは、印刷物の表面に抗菌剤入りのニスあるいはフィルムをコーティングし、表面を抗菌する加工を施すことです。抗菌とは「菌の増殖を抑えること」であり、ウイルスの除去といった「完全な殺菌・滅菌」とは異なる概念です。

抗菌印刷では、ISO規格(ISO 22196法)に準じた抗菌試験をクリアした素材を用います。コロナ禍で注目されて需要が高まり、最近では清潔・衛生といった付加価値を印刷物に与える方法とみなされています。

抗ウイルス印刷との違い

抗菌印刷とよく似たものとして、抗ウイルス印刷があります。

まず抗菌印刷は主に細菌の増殖抑制が目的であり、ウイルスそのものの抑制を保証するものではありません。

一方、抗ウイルス印刷は、印刷面に抗ウイルス作用のあるコーティングを施し、ウイルスの数を減少させることを目的とする加工です。抗菌印刷のニスとは異なる「抗ウイルス添加剤」が使われ、両者は薬剤や試験対象などに差があります。

なお、抗菌印刷・抗ウイルス印刷ともに、人体への影響を抑えて安全性を確保する点は同じです。両者を併用して「抗菌・抗ウイルス加工」をうたっている印刷物もあります。

抗菌印刷の種類

抗菌印刷は、印刷物の表面をニスやフィルムで加工する方法が一般的です。印刷物の表面全体に薄い抗菌層をつくれるため、デザイン部分を問わず均一な抗菌効果があります。光沢が出るだけでなく、汚れや摩擦などによる劣化にも強くなる点が特徴です。

表面を加工する方法以外には、印刷物に抗菌剤を練り込んだ抗菌用紙を用いる方法があります。ただし、抗菌用紙の場合は、紙の上にインキを乗せるとその部分の効果が出にくい点がデメリットです。

そのほか、インキに抗菌剤を入れる方法もありますが、白地部分には効果がないといった制約があります。

抗菌印刷が活用される場面

抗菌印刷は多くの人の手に触れるものや、食品・医療といった衛生面が重要なものによく用いられます。例として、分野ごとの活用場面は以下のとおりです。

分野具体例
商品・パッケージ・食品や日用品のパッケージ
・コスメや医薬部外品の包装
・ジュエリーや記念品のギフト包装
・マスクケース
企業・オフィス・会社案内
・カタログ
・ノベルティ
・封筒
飲食・サービス・メニュー表
・テーブルPOP
・テイクアウト用パッケージ
・伝票ホルダー
医療・福祉・患者向けパンフレット
・診察券
・待合室掲示物
・医療用ファイル
教育・文具・書籍
・手帳
・ノート
・ブックカバー

上記のように、業種を問わず、商品の包装や冊子、ノベルティなどに幅広く活用されています。

抗菌印刷のメリット

企業が抗菌印刷を活用する主なメリットには、以下があげられます。

  • 細菌を抑えて安全・安心な印刷を実現できる
  • 企業や商品のイメージアップにつながる

メリットを把握すると、自社に適した活用方法を具体的にイメージできるようになります。それぞれ詳しくみていきましょう。

細菌を抑えて安全・安心な印刷を実現できる

抗菌印刷を施した印刷物では、大腸菌・黄色ブドウ球菌などの増殖を抑制できます。菌の増殖による汚れや腐敗の進行を抑えられるだけでなく、防臭・防カビ効果を発揮する場合もあります。

さらに、日常的に触れられるメニューやパンフレットなどに抗菌性を持たせれば、菌の接触媒介リスクを減らせます。細菌の繁殖が抑えられて、印刷物の利用者に衛生面での安心感を与えられる点もメリットです。

ただし、抗菌印刷でも、表面が汚れていると抗菌剤がおおわれて機能が発揮されにくくなる場合があります。そのため、抗菌性を保つためには、日常的な管理を意識することが重要です。

企業や商品のイメージアップにつながる

抗菌印刷の導入により、衛生面に配慮した企業という印象を与えられ、ブランド価値の向上につながります。

印刷物に抗菌の付加価値を付与することで、競合他社との差別化を図りやすくなる点がメリットです。例えば、商品・サービスの販促物やノベルティ、パッケージでの訴求などに用いられます。

また、抗菌対応を打ち出すと、SDGs・CSRなどの衛生・健康分野の取り組みとしてアピールできる材料になります。

抗菌印刷の導入は初期コストがかかるものの、長期的に見ればメリットの大きいマーケティング手法のひとつです。

抗菌印刷の効果はSIAAマークで証明できる

抗菌のシンボルマークとして、SIAA(抗菌製品技術協議会)が制定する「SIAAマーク」があげられます。抗菌だけでなく、抗ウイルスのマークもあります。

SIAAとは、抗菌加工製品の普及を目的として、関連するメーカーや試験機関によってつくられた団体です。抗菌加工した製品に対する自主規制や品質指針を設けています。SIAAマークは、消費者が抗菌表示の機能や信頼性を判断するための目安として活用が可能です。

SIAAマークを表示するには、以下の3つの基準を満たす必要があります。

基準詳細
抗菌性・未加工品と比べて細菌の増殖割合が1/100以下である
・耐久性試験後も効果を維持する
安全性SIAA独自の安全性基準を満たしている
適切な表示抗菌剤の種類と加工部位を示している

印刷物がSIAAの基準を満たすと、SIAAロゴと登録番号を付与できます。SIAAマークはSIAAの会員のみが使用でき、非会員は表示できない決まりです。

抗菌印刷を提供する印刷会社には、SIAAマークの取得・表示を訴求ポイントとしている場合が多くあります。そうした印刷会社に印刷物を依頼すれば、SIAAマークの付いた製品をつくれます。

SIAAマークの詳細については、SIAAの公式ホームページを併せて参照してください。

参照:抗菌製品技術協議会「SIAAマークとは

抗菌印刷を導入するポイント

企業が抗菌印刷を導入する際には、通常の印刷との違いを意識して、印刷会社への依頼を進める必要があります。

具体的なポイントには、以下があげられます。

ポイント詳細
印刷物の種類と目的を決める・メニューやパンフレット、パッケージなど印刷物によって必要な抗菌性能に差がある
・目的が「清潔感の訴求」か「SIAA認証による信頼性確保」かにより依頼内容が異なる
印刷会社を比較・検討する・抗菌印刷の対応が可能な複数の印刷会社をホームページで比較する
・抗菌ニス・フィルム・インキなどの方式や、SIAAマーク対応の有無を確認する
費用対効果を意識する・抗菌印刷は通常の印刷に比べて割高になる
・目的に応じて、抗菌加工の種類や抗ウイルス加工の有無などを慎重に選ぶ
納品スケジュールを立てる・特殊な加工やSIAAマークの認証が必要な場合、通常の印刷よりも納品に時間がかかる
・印刷物が必要なタイミングを確認し、無理のないスケジュールで進める
仕上がりを確認する・抗菌印刷は質感や光沢が通常の印刷と異なる
・本印刷の前にサンプルを作成して仕上がりの認識を共有する

上記のポイントを押さえれば、抗菌印刷の依頼をスムーズに進められます。細かい注意点は印刷会社に確認・相談しながら進めると安心です。

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まとめ

まとめ

抗菌印刷は、印刷物の細菌を抑えて安全性を高められるだけでなく、自社やブランドのイメージアップにつながります。自社の信頼性を高めたい場合には、印刷物にSIAAマークの表示が可能な印刷会社に依頼すると効果的です。

抗菌印刷を導入する際は、印刷物の目的や種類を固めた上で、実績のある印刷会社を比較・検討しましょう。

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