耐水シール(防水シール)とは、水濡れしやすい環境下でも品質を保ち続けられるシールです。耐水シールの制作を検討しているものの、素材や印刷方法がわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、耐水シールの概要やメリット、印刷方法、注意点などをわかりやすく解説します。耐水シールやラベルの制作について深く理解し、自社のニーズに合った製品を作りましょう。
耐水シール(防水シール)とは

耐水シールとは、水がかかっても破れたりふやけたりしにくい特徴をもつシールのことです。防水シールや耐水ラベルとも呼ばれ、水濡れに強い印刷用紙や特殊加工によって制作します。
耐水シールの主な使用例は、以下のとおりです。
- キッチン用品(調味料や調理器具など)
- バス用品(シャンプー・ボディソープなど)
- 瓶ラベル(酒・ジュースなど)
- 冷凍・冷蔵食品のラベル
- 企業のロゴシール
- 屋外用の防水ステッカー
雨・水に濡れやすい場所や、気温の変化が激しい場所、湿気の多い場所などで高い効果を発揮します。なお、シールの粘着剤や印刷に用いるインキ、台紙(剥離紙)に耐水効果があるわけではなく、シール本体の素材や加工が耐水性を実現します。
耐水シールを活用するメリット

耐水シールを活用すると、以下の2つのメリットが得られます。
- 水に濡れても丈夫で剥がれにくい
- 耐久性にも優れる
それぞれ詳しくみていきましょう。
水に濡れても丈夫で剥がれにくい
耐水シールは耐水性・防水性が強化されているため、表面に水がかかったり結露が生じたりしても破れにくくなっています。水のほかに、洗浄や入浴などでお湯がかかった場合でも問題なく使用可能です。
また、擦れに対する強さも耐水シールの優れた特徴のひとつです。濡れた表面を擦っても簡単には破れないため、印字が消える、インキがにじむなどの事態も起こりにくくなっています。そのため、商品の重要事項の記載や警告の表示などにもよく用いられています。

耐久性にも優れる
ラミネートなど耐水加工を施したシールは、無加工の製品に比べると耐久性も高めです。そのため、商品のラベルであれば、流通の過程や使用時に劣化して破れてしまうといったトラブルを防ぎやすくなります。
なお、耐水加工により光沢やマット感などさまざまな質感を表現できるので、高級感の演出や他社との差別化といった副次的メリットも得られます。
耐水シール印刷の種類

耐水シール(防水シール)の印刷には、フィルム素材の耐水性能を利用する手法と、紙素材に耐水加工を施す手法があります。
それぞれの詳細を解説します。
フィルム素材を活用する
耐水性に優れたフィルム素材により、耐水シールを制作する手法が一般的です。耐水シールに使われる主なフィルム素材の名称と特徴は、以下のとおりです。
素材 | 特徴 |
合成紙(ユポ) | ・耐水性に優れ、筆記適性もある ・紙のようなしなやかさと質感をもつ ・耐候性はやや低いため屋内向け |
PETフィルム | ・耐水性に優れ、より高い耐久性を有する ・透明・白・金色・銀色などがあり、デザインの幅が広い ・硬めの素材で曲面への貼りつけは不向き |
塩ビ | ・耐水性・耐久性に優れており色も鮮やか ・柔軟性が高く曲面に貼りやすい ・耐候性が高く屋外用途にも向いている |
サテン | ・耐水性があり、布製で柔らかい ・表面に光沢感があり、つるつるとしている ・布地に貼りやすく、イベントのゼッケンや名札に使われる |
屋内向けなら合成紙、デザイン性を重視するならPETフィルム、曲面に貼るなら塩ビなど、用途に応じて使い分けましょう。

紙素材に耐水・撥水加工を施す
紙素材に耐水加工や撥水加工を施し、水に強いシールに仕上げる手法もあります。
紙素材を加工する場合の代表例がラミネート加工です。シールを印刷した上からフィルムを貼り付けて加工する手法で、ツヤ感やマット感も出せます。ただし、少量の水から表面を保護する効果はあるものの、完全な防水処理ではない点に注意しましょう。
また、紙の表面にニスを塗布するニス加工もあります。軽く水がかかる程度であれば、ニス加工の方が低コストで済む場合が多いでしょう。
そのほか、耐水紙という特殊な素材を活用する場合もあります。耐水紙とは、製造時に合成樹脂や薬剤を使用し、紙自体に耐水性能をもたせている紙のことです。
いずれの手法もフィルム素材に比べると耐水性や強度は下がりますが、強い耐水性が不要な場合やフィルム素材が高額な場合、環境に配慮したい場合などに採用されています。


耐水シール印刷に関する注意点

耐水シール(防水シール)印刷に関する注意点には、以下の2点があげられます。
- 耐水性能がどこまで必要か検討する
- 耐水性以外の性能も考慮する
それぞれ詳しく説明します。
耐水性能がどこまで必要か検討する
耐水シールを印刷する際は、耐水性の高さをどこまで求めるか見極める必要があります。例えば、表面にかかる水や汚れを防止したいのであれば、紙素材にラミネート加工をする手法でも十分な効果が得られるでしょう。
しかし、ラミネート加工は表面への水濡れには強いものの、隙間から水が浸入して中にある紙が濡れてしまう恐れがあります。特に高い耐水性を求める場合は、フィルム素材の上からラミネート加工を施す手法がおすすめです。
ただし、一般的にフィルム素材は紙素材よりコストがかかる点に注意が必要です。オーバースペックになってしまい必要以上のコストをかけてしまうことの無いよう、耐水シールの制作は、予算の範囲内で自社の目的に合った製品づくりを検討しましょう。
耐水性以外の性能も考慮する
耐水シールの使用目的によっては、耐水性以外の性能も考慮する必要があります。
例えば屋外用途のシールは、耐候性・耐熱性・耐寒性なども考慮しなければなりません。屋外では、雨だけではなく太陽光や気温、風雪の影響も受けるためです。
そのほかにも、食用油のラベルやオイル缶ラベルの場合は耐油性、薬品ラベルや溶剤ラベルであれば耐薬品性も重要な要素になります。
耐水シールの用途や使用環境に応じて必要な性能を整理しましょう。
耐水シールを自社で印刷する方法

耐水シール(防水シール)が数枚程度の小ロットかつ簡易な耐水性で十分な場合は、自社制作も十分に可能です。シールの素材は、文具店やインターネットショップ、百円均一ショップなどで手に入ります。
市販のシール用紙には、保護フィルムがついているものやマット加工・光沢加工がされているものなど、豊富な種類が用意されています。用途や使用場所、必要とする耐水性能の高さなどを検討し、目的に応じた素材を用意しましょう。
なお、シールが軽く水をはじく程度でかまわなければ、通常の紙シールの上から防水スプレーを吹きかけることで軽度な耐水性が得られます。
耐水シールを印刷会社に依頼する選択肢も

耐水シール(防水シール)に高い耐水性が必要な場合やまとまった枚数が必要な場合などには、印刷会社に注文するとよいでしょう。特に冷凍・冷蔵食品のラベルや屋外用のシール、車やバス用品などは、高い耐水性・耐久性が求められます。
用途に応じた素材選びがしやすい点も、印刷会社に依頼する大きなメリットです。
例えば、通常の和紙に耐水性はないものの、特殊な素材と和紙の組み合わせで作られた耐水性の高い和紙を取り扱う印刷会社があります。日本酒やワインなどのボトルごと氷で冷やす場合にも剥がれにくい和紙として、商品に活用されています。
また、印刷会社の場合、環境に配慮した素材を使った耐水ラベルも制作可能です。耐水性のあるユポにも、植物由来の原料を使用して環境負荷を抑えているものがあります。
より高い品質を求める場合は、印刷会社への依頼を検討するとよいでしょう。


まとめ

耐水シール(防水シール)には、水に濡れる環境でも破れにくく、水以外に対しても耐久性があるといったメリットがあります。制作する際には、耐水性能がどこまで必要かといった目的を整理した上で、適した素材を選ぶことが大切です。
簡易なシールであれば自社制作も可能ですが、さまざまな環境に耐えられる高品質なシールを制作したい場合は、印刷会社に相談するとよいでしょう。