「シールをデザインする方法がわからない」「おしゃれなデザインにならない」などのお悩みをお持ちではないでしょうか。パッケージ用シールのデザインはチラシやパンフレットなどと違い、小さな面積の中でデザインを行わなければいけません。
デザインには個人の好みがありますが、商品やサービスの魅力が伝わるデザインのシールを作るためには、作り手の感覚のみに頼るべきではありません。
まずはレイアウトの基本や、見る人の感情を踏まえた工夫など、デザインのセオリーに従うことが重要です。その上で、作り手の個性を加えれば、効果の高いデザインに仕上がります。
本記事では、シールのデザイン制作のポイントや事例を解説するので、ぜひ参考にしてください。
映える・売れるシールのデザイン制作5ステップ
商品やサービスの魅力が伝わるシールのデザイン制作について、5ステップで紹介します。各ステップのポイントを押さえて、高品質なシールを作りましょう。
1.コンセプトとターゲットを決める
シールのデザインを決める際には、コンセプトやターゲットの明確化が重要です。
万人に好かれるデザインは存在せず、多くの人に受け入れられることを狙うと、かえって誰の目にも留まらないものになりかねません。ターゲットを絞り込むことで、デザインの目的が明確になり、商品の魅力が伝わるシールを作れます。
具体的な検討ポイントは、以下の通りです。
- 商品の特徴や強みを洗い出して、コンセプトを決める
- 年齢や性別、ライフスタイルなど、ターゲット層を絞り込む
- どのように商品の魅力を伝えるかを具体化する
デザイン制作を進める前に「誰に」「何を伝えるか」を十分に検討しましょう。
2.デザインを調べる
次に、決定したコンセプトやターゲットを念頭に置きつつ、参考になりそうなデザインをリサーチします。自社内のアイディアだけでは、どうしても既存のデザインにとらわれてしまうため、リサーチ範囲を広げることが重要です。全く違う製品のデザインも参考になることがあります。
店頭に並んでいる商品やWeb検索、デザイン関連の書籍などを通じて、既存のシールデザインをピックアップします。その際、検討中のイメージに近いデザインだけではなく、ターゲット層が似ている他社のシールももれなくリスト化しましょう。
競合リサーチは、他社と差別化できるデザイン制作の前提です。調べたデザインを見ながら、自社のシールがなぜ他社より魅力的であるか、明確に言語化できるまで考え抜く必要があります。
3.レイアウトを決める
調べたデザインを参考に大きな方向性ができたら、以下の順番で実際のレイアウトを決定します。
- シールのサイズを決める
- 記載する内容を取捨選択する
- フォント(書体)を選ぶ
- 文字サイズや配置を整える
特に、フォントはデザインの印象やクオリティを左右するため、慎重に選択する必要があります。代表的なフォントとその特徴は、以下の通りです。
種類 | 特徴 |
ゴシック体 | ・文字の太さがほぼ均一であり、装飾が少ない ・文字を目立たせたい場合に向いている |
丸ゴシック体 | ・ゴシック体の線画の両端を丸くしたものである ・親しみやすい印象を与えられる |
明朝体 | ・縦線が横線よりも太く、はねやはらいなどの抑揚がある ・文字量が多くても読みやすい |
楷書体 | ・明朝体と同様に文字の抑揚があり、より毛筆に近い ・誠実な印象を与えられる |
行書体 | ・楷書を続け書きして、やや崩している ・優雅さや日本らしさを感じさせる |
POP体 | ・手書き風で全体的に丸みを帯びている ・カジュアルな雰囲気がある |
シールのコンセプトをもとにフォントや文字サイズを決めて、配置を整えましょう。レイアウトをゼロから決めるのが難しければ、市販のテンプレートの活用も選択肢の一つです。
4.配色を決める
コンセプトやターゲットに合う配色の決定も、おしゃれなデザインには不可欠です。
配色の基礎知識として、「色相環(しきそうかん)」を押さえておきましょう。色相環とは、色を円環状に配置したもので、パソコン上で色を選択する際にも使用します。
色相環で隣り合う色を「類似色」、向かい合う色を「補色」と呼びます。統一感のあるデザインにしたい場合は類似色、インパクトを与えたい場合は補色を取り入れるのがポイントです。
ただし、高彩度の補色を隣に並べると、不快感を与える配色になる可能性があります。色の彩度を下げる、別の色をあいだに挟むなどのテクニックが必要です。
また、使用する色が多いとまとまりがないデザインになるため、3色程度に抑えるのが基本です。色の面積の割合は「70:25:5」を目安に、広範囲で使用する色から決めていきます。
色相環が示す色の原理を理解した上で、商品やターゲット層に合わせた色を考え抜くことが重要です。
5.素材を選ぶ
印刷する素材によって、シールの見え方は大きく異なります。
例えば、一口に紙素材といっても、光沢のあるミラーコート紙や高級感の出る和紙など種類はさまざまです。また、食品ラベルには防水性が求められるなど、商品に合わせた機能も考慮に入れて素材を選ぶ必要があります。
素材選びの工夫に加えて、コンセプトをもとに箔押しやエンボス(浮き出し)加工などの表面加工を取り入れるのも効果的です。
シールのデザインがあか抜けない理由4選
シールのデザインがあか抜けない理由4選を紹介します。避けるべきポイントを把握して、おしゃれなシール制作につなげましょう。
1.何となく文字や画像を並べている
何となく文字や画像を並べたデザインは、伝えたい情報の優先順位づけが不十分で、内容が理解しにくくなります。ターゲットに対して情報を適切に提供できず、商品やサービスの魅力も届きません。
特に、シールの面積は小さいため、要素を詰め込みすぎると情報が伝わりにくくなります。内容が一目でわかるデザインが重要であり、ターゲットにとって真に必要な情報を絞る必要があります。
優先度に合わせて文字や画像のサイズを変えたり、関連する文字情報をグループ化したりして、視覚に訴えるデザインを制作しましょう。
2.フォントや色選びに戦略がない
「何となくおしゃれに見える」といった理由でフォントや配色を選ぶと、デザイン全体のバランスが悪くなる場合があります。単体で見た印象が良くても、コンセプトやターゲットを無視したデザインは、シールを貼った時にアンバランスな見え方になりかねません。
また、イメージの異なる書体を乱雑に組み合わせたデザインは、統一感がなく、おしゃれとはほど遠い印象になります。「楷書体は誠実さ、丸ゴシック体は親しみやすさ」「青は爽やかさや安心感、赤は情熱や温かさ」など、フォントや色にはそれぞれイメージがあります。
シールのコンセプトに合わせて、フォントや配色に一貫性を持たせることが重要です。
3.モニターの中でデザインを完結させている
アプリやツールを用いてモニターの中だけでデザイン制作を進めるのも、おしゃれなシールができない理由の一つです。
モニターに映し出されている色と用紙に出力される色には差があります。そのため、モニターのみでデザインをチェックして印刷すると、本来使用したかった色とは異なるものが出てくる可能性があるため注意が必要です。デザインレイアウトも、画面上と出力したものではサイズ感の違いなどからバランスが悪く見えることもあります。
また、シールが実際に貼付されている状態を確かめるのも重要です。競合の商品に埋もれてターゲットの目に留まらず、想定していた効果を発揮しない場合があります。ターゲットの手に届くまでの一連の動きをイメージしながら、デザイン制作に取り組みましょう。
4.シールに浮き・色褪せ・にじみがある
デザインが良くても、シールに浮きや色褪せ、にじみなどの不具合があれば、チープな印象になります。用紙やデザインに合った印刷方法を選び、シール貼付時は気泡が入らないよう凸凹面を避けるなど、品質を上げるための工夫が必要です。
また、インクジェット印刷の場合、完成時の見栄えに問題がなくても、数ヶ月で色褪せが生じる可能性があります。シールの浮きや印刷のにじみは、一般的なオフィス用プリンターで完全に防ぐのは困難です。
フルカラーの商品ラベルなど、細部まで質の高さが求められるシールを作る場合は、印刷会社への外注も視野に入れる必要があります。
高品質なデザインのシールは自作できない?
シールのデザインは自社で制作可能であり、費用面や手軽さといった観点では外注より優れています。デザインの工夫の余地が少ない際に、まず自社で制作するのは有効な選択肢の一つです。
しかし、市販のテンプレートでは、ありふれたデザインになりやすい傾向があります。一般的なオフィス用プリンターは、実際の印刷と比べると耐久性や見栄えが劣りやすい点にも注意が必要です。
また、デザイン制作には、コンセプト決めや品質チェックなど、ノウハウを要するタスクもあります。デザイン制作にかける人員や時間、用紙の準備、プリンター等での出力や手配など、想定よりコストと時間がかかることもあります。
特に、主力商品のラベルなど本格的なシール制作では、費用対効果でみると外注の方が優れていることも少なくありません。デザイン部門のある印刷会社へ依頼すれば、デザイン制作から印刷までの工程をまとめられ、高品質なシールをスムーズに制作できます。
シールデザインの好事例
ここからは、実際のシールデザインの好事例を2つ紹介します。事例を参考にして、他社と差別化できる魅力的なシールを制作しましょう。
年配層向けの高級感のあるデザインでブランディング|生馬油ゴールドラベル
株式会社ディアラは、馬油を活用したスキンケア商品「生馬油ゴールドラベル」を提供しています。当初は金素材のラベルを使用していましたが、ツヤ感のある金素材が逆にチープな印象を与えてしまうことが課題でした。
そこで、メインターゲットである年配層の顧客を意識して、「高級感」や「昔ながら」といったコンセプトをもとに、企業ロゴを活かした金素材の和紙のラベルを取り入れました。
手触りがよく高級感のある金素材の和紙ラベルに、シンプルなロゴデザインが顧客や販売店から評価を得て、商品のブランディングにつながっています。
創意工夫のシールによりブランドの認知拡大|近江富士いちご
株式会社電農舎は、いちご農園を運営して「近江富士いちご」を生産・販売しています。
いちごの識別シールにデザイン性を持たせた上で、QRコードを入れて自社サイトと連携させる工夫を行いました。QRコードを読みとると自社サイトにアクセスでき、商品の最新情報を閲覧できる仕組みです。
その結果、自社サイトやSNSへのアクセス数が増加し、ブランドの認知拡大につながりました。
まとめ
おしゃれなシールを制作するためには、商品のコンセプトやターゲットに合わせたデザイン設計が重要です。フォントや配色、素材選びなど、検討すべきポイントが多くあります。また、法令に沿った表示やマークの表記などが抜けていないかのチェックも必要です。
市販のテンプレートを活用して自作することもできますが、おしゃれでクオリティの高いシールを制作したい場合は、専門の印刷会社への依頼を検討しましょう。