フォントの選び方とは?種類や印刷物のデザインを良くするコツも紹介

フォントの選び方とは

フォントにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や役割が大きく異なります。

一方で「フォントの選び方がわからない」「フォントを活用してイメージどおりの印刷物を作りたい」などとお考えの方もいるのではないでしょうか。

本記事では、主なフォントの種類と特徴、フォントの選び方で気をつけたいポイント、印刷物のデザインを良くするコツなど、フォントの基礎知識を紹介します。

印刷物向けのフォントの選び方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

主なフォントの種類と特徴

フォントには「見た目を整えて見栄えを良くする」「製品やサービスのイメージを明確に伝える」などの効果があります。フォント次第で印象が180度変わる可能性もあるため、フォントの選択は重要です。

ここでは、基本的なフォントの種類と特徴を紹介します。フォントには有料のものと無料のものがあり、数多くの種類があります。紹介しているフォントはごく一例です。

ゴシック体

ゴシック体は、文字の太さが均一化されている書体です。

飾りが少なくシンプルなため、大きさを変えても読みやすさはほぼ変わりません。タイトルや見出し、企業ロゴなど文字を目立たせる目的でよく使用されます。

ゴシック体には、明瞭さが特徴の「メイリオ」、Windows 10・11の標準フォントに採用されている「游ゴシック」、文字の太さのバリエーションが多い「ヒラギノ」などがあります。

いずれも視認性に優れており、印刷・Webどちらでも使いやすいフォントです。

丸ゴシック体

丸ゴシック体は、ゴシック体の端や角に丸みをつけた書体です。

女性向けの商品や子ども向けのアイテムなど、柔らかく優しい印象を出したいときに使うと効果的です。

丸ゴシック体には、「ヒラギノ」やスタイリッシュでクセのないデザインが魅力の「小杉丸」、丸みのあるデザイン性の高さが人気の「zen丸ゴシック」などがあります。丸みの深さで用途を使い分けるとよいでしょう。

明朝体

明朝体は、太い縦線と細い横線で構成されたメリハリのある書体です。

「うろこ」と呼ばれる三角形や「とめ」「はらい」があり、長文でも読みやすいつくりになっています。ビジネス文書などフォーマルな印象を与えたいときに効果的です。

明朝体には、AdobeとGoogleが共同開発した「源ノ明朝JP」、筆使いの美しさを字形に取り入れた「ヒラギノ明朝」などが挙げられます。どちらの書体も、サイズを小さくしてもつぶれにくい点が長所です。

楷書体

楷書体(かいしょたい)は、手書きの文字に近い筆使いを表現した書体です。文字を手書きする際の見本に使われるときもあります。

日本の伝統的な雰囲気や荘厳さを表現したいなら、楷書体の使用を検討するとよいでしょう。なお、楷書体を模してテキスト用に仕上げた書体が教科書体です。

楷書体には、一般的な「楷書体」以外にも書家のように力強い筆使いが特徴的な「白舟極太楷書教漢」、線をひと回り細くした「白舟楷書教漢」などがあります。

行書体

行書体(ぎょうしょたい)は、楷書体の形を残しつつ筆で書くような続き文字を取り入れている書体です。

楷書体と同様に、和の雰囲気や歴史・伝統を伝えたいときによく使われます。行書体は、長い文章よりもデザイン性の高いタイトルやキャッチコピーの方が、その特徴を活かしやすいでしょう。

行書体には、一般的な「行書体」や「祥南行書体」、流麗な筆使いが美しい「白舟行書教漢」、曲線の柔らかさが魅力の「香蘭行書」などがあります。

POP体

POP体は、カジュアルでデザイン性の高い書体です。

ここぞというところで使うとデザインが引き締まり、ユーザーに強い印象を与えられます。ただし、使い過ぎはかえって読みにくくなるため注意が必要です。

同じPOP体でも線の太さや装飾などの違いから幅広い種類があるため、強調したいイメージやターゲットによって使い分けるとよいでしょう。

欧文フォント主な欧文フォントには、セリフ・サンセリフ・スクリプト・デコラティブの4つがあります。各フォントの特徴は次のとおりです。

  • セリフ体:文字飾りがあり、線に強弱がついている
  • サンセリフ体:文字飾りがなく、線も均一

書体の端にある飾りのことをセリフと言います。セリフ体はセリフがあり、サンセリフ体にはセリフがありません。
またセリフの形状によっても分類や呼び方が違っていたりとフォントは奥が深い分野です。

  • スクリプト体:筆記体をフォント化したもの
  • デザイン性が高く、ユニークな見栄え

セリフ体は一般的な文章向きで、サンセリフ体はタイトルロゴのような短文向きです。インパクトや高いデザイン性を求めるなら、スクリプト体やデコラティブ体の使用も検討しましょう。

フォントの選び方で気をつけたいポイント

フォントの選び方で意識したい点は、視認性・可読性・判読性の3つです。

フォントによって、これらの性質を満たす度合いが異なります。印刷物を作る目的や求める効果と照らし合わせて検討すれば、使用すべきフォントが絞られるでしょう。

それぞれの性質を詳しく説明します。

視認性|文字の見やすさ

「視認性」とは、文字を目にしたときの見やすさのことです。人間の脳は、見やすいものや認識のしやすいものは印象に残りやすい特性を持っています。

例えば、タイトルや強調したい一言、商品のキャッチコピーなどは、シンプルで目に留まりやすいゴシック体が特に向いています。

可読性|文章の読みやすさ

「可読性」とは、文章を目にしたときの読みやすさのことです。文章を長く読み続けても疲れにくいフォントが、可読性の高いフォントといえます。

可読性の高いフォントの代表例が明朝体です。明朝体は文字のつくりに適度な空白があるため、読み手にかかる負担を抑えられます。

一方で、ゴシック体は線が太めなため、長文に用いると窮屈で読みにくくなりがちです。印刷物に長文を入れる場合、シンプルな明朝体にするか、ゴシック体の中でも線の細いものを選びましょう。

判読性|文字の判別しやすさ

「判読性」とは、文字の判別がしやすいかどうかのことです。よくある文字の見間違いには、数字の「1」とアルファベットの「I」、濁点「゛」と半濁点「゜」などがあります。

印刷物に使うフォントは、判読性の高いものの方がユーザーに好まれがちです。

近年では、UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)と呼ばれるフォントが数多く開発されています。年齢や性別、障がいの有無にかかわらず、誰もが判別しやすいフォントです。

判読性を高めたい場合、UDフォントの使用も検討しましょう。

印刷物のデザインを良くするフォント選びのコツ

印刷物のデザインを良くするフォント選びのコツには、以下の3つが挙げられます。

  • 基本的なフォントはシンプルなものを選ぶ
  • 使用するフォント数は2~3種類に絞る
  • 日本語と英語の組み合わせの場合は欧文フォントを使う

フォントを効果的に使えば、ユーザーに伝えたいイメージがより正確に表現できます。

それぞれ詳しくみていきましょう。

基本的なフォントはシンプルなものを選ぶ

印刷物に使用する基本的なフォントは、視認性・可読性・判読性に優れたシンプルなものを選びましょう。よく使われるフォントは、これらの要件を一定程度満たしているため、読みやすいものとなっています。

メインで使用するフォントはシンプルなものを使用し、POP体や行書体のようにデザイン性のあるものは、短文でインパクトを与えたい箇所に使うと効果的です。

使用するフォント数は2~3種類に絞る

印刷物に使用するデザインは、フォントを2〜3種類に絞る方がよい傾向があります。フォントが増え過ぎるとデザインの印象がまとまらず、アピールポイントがわかりにくくなるからです。

フォントには「ファミリー」と呼ばれるグループがあります。ファミリーとは、同じフォントでウエイト(文字の太さ)が異なるフォントをグループ化したものです。

ウエイトはW1、W2、W3……と表し、数値が大きくなるほど線も太くなります。ウエイトが異なると、同じフォントでも与える印象が変わってきます。

ファミリーを用いれば、フォントの数を絞りつつ工夫を凝らしたデザインが制作可能です。ウエイトの違いを上手く活用し、デザインを引き締めるようにしましょう。

日本語と英語の組み合わせの場合は欧文フォントを使う

デザインに日本語と数字・アルファベットが混在する文を取り入れる場合、数字とアルファベットは欧文フォントにする方が見栄えが良くなります。

和文フォントに用意されている数字やアルファベットはサイズが小さめで、和文フォントだけだとアンバランスになりがちなためです。欧文フォントは数字やアルファベットの表現に特化しているので、和文フォントよりバランスが取りやすくなっています。

和文フォントと組み合わせて使用する場合は「セリフと明朝体」「サンセリフとゴシック体」など、似た特徴を持つもの同士で組み合わせるとよいでしょう。

なお、デザインの事情で和文フォントしか使えない場合は、和文と数字・アルファベットの大きさを揃えると、バランスが取りやすくなります。

まとめ

フォントには、印刷物の見栄えを向上させ、伝えたいメッセージをより明確にする役割があります。視認性や可読性などの要素を考慮しながら、イメージに合ったフォントを選ぶことが重要です。

デザインを良くするためには、フォント数を絞るなどのノウハウが求められます。もし自社にとって重要な印刷物のデザイン制作に迷ったら、専門のデザイン会社や印刷会社の知見を借りるのもよいでしょう。

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