インクとインキの違いとは?印刷インキの成分や種類も詳しく解説

印刷のインクとインキ

インクとインキは、性質や語源に違いがあるといわれています。一方で、インクとインキは用語として使い分けをしていないという声もあります。

社内のやりとりや印刷会社との連絡を行うにあたって、インクとインキがどう違うのか気になっている方もいるのではないでしょうか。

今回は、インクとインキの違いや印刷インキの成分、種類などをわかりやすく解説します。それぞれの特徴を深く理解して、印刷物に関するスムーズな意思疎通に役立てましょう。

目次

インクとインキの違いとは

インクとインキは、以下のように粘度で区別されることがあります。

  • インク:粘度が低くさらさらに近い
  • インキ:粘度が高くねっとりしている

ボールペンや万年筆などの筆記用具に使用する場合はインクと呼ばれ、印刷物に用いる場合はインキと呼ばれるのが一例です。ただし、この区別は絶対的ではなく、どちらの呼び方でも問題ありません。

実際に印刷会社やインキメーカーでは、粘度にかかわらず呼び方をインキで統一している場合が多くあります。そのことを知っておけば、印刷関係の問い合わせや打ち合わせで役立つでしょう。

以下では、インクとインキ、それぞれの特徴や語源をさらに詳しく解説します。

インクとは

インクは、筆記用具などに使用する顔料・染料を含む液体を指すことが一般的です。

ただし、筆記用具メーカーでも「インキ」と呼ぶところはあります。また、プリンターのカートリッジは、多くの場合インクカートリッジと呼ばれています。

インクの語源は英語の「ink」です。そのため、欧米をはじめ英語圏では「インク」の呼び方で伝わります。もし海外企業と印刷やデザインに関するやりとりを行うのであれば、豆知識として知っておくと便利です。

インキとは

インキは、主に印刷会社で用いられる油分の多い印刷用インキを指します。

近年では、DTPデータ(パソコン上で印刷物の制作や出力を行うためのデータ)を印刷物に再現するために用いられています。

インキの語源はオランダ語の「inkt(インキト)」です。日本にインキが伝わってきたのは蘭学が盛んだった江戸時代で、当時は「阿蘭陀(オランダ)墨」との呼び名もありました。

そして時代は明治に変わり、文明開化の波に乗って欧米から多くの言語や技術が日本へ流入してきます。それにともない、英語の「ink」が伝わってきました。呼び方が混在しているのは、オランダ語と英語という異なる言語の影響によるものです。

オランダ語表記は現代も「inkt」です。ただし、オランダにはバイリンガルやマルチリンガルが多いため、「ink」と呼んでも通じるでしょう。

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印刷インキに使用される成分

印刷インキに使用される成分は、着色剤・ワニス・添加剤の3つに大きく分かれます。

着色剤は、印刷物の色を再現するために使われています。着色剤に使用する色素は、顔料または染料であり、それぞれの特徴は以下のとおりです。

名称特徴
顔料・水に溶けにくい
・耐光性・耐久性が高い
・プラスチック製品や屋外看板などに向いている
染料・水に溶けやすい
・耐光性・耐久性は顔料に劣る
・繊維に浸透しやすく発色が美しいため、写真印刷など鮮やかな表現に向いている

ワニス(ビヒクル)は、油脂類や天然樹脂、合成樹脂などを溶剤に溶かして作られる成分です。着色剤が印刷物から剥がれないように外から包んで吸着させる役割があります。

添加剤は、インキの硬化速度を調整したり流動性を変化させたりと、インキの状態を調整する薬剤です。使用する添加剤の一例に、ワックスや界面活性剤などがあげられます。

これらの原材料の割合を調整することで、印刷用途に合ったインキが仕上がります。

主な印刷インキの種類

ここでは、主な印刷インキの種類と特徴をわかりやすく解説します。

印刷会社などで通常よく使用される印刷インキは、以下のとおりです。

名称特徴
オフセットインキ(平版インキ)・オフセット印刷に用いられるインキ
・平版にのせて紙などに転写する
・書籍やカレンダー、パンフレットなどの一般的な印刷物に幅広く取り入れられている
新聞インキ・新聞印刷の専用インキ
・乾きや浸透を速くするため、低粘度で流動性が高くなっている
・新聞や政府の官報・広報などによく使用される
凸版インキ(フレキソインキ)・凸版印刷で用いられ、凸部分の輪郭が強調されて印字が鮮明になる
・水性フレキソは環境にやさしいインキとしても知られている
・段ボールや封筒、紙おむつなどによく使用される
グラビアインキ・印刷の明暗や濃淡の表現に優れており、光沢も美しい
・フィルム素材への適合性が高く、経年劣化にも強い
・グラビア印刷のほかに食品包装フィルムや建築資材などにも使われている
スクリーンインキ・メッシュの版を活用するスクリーン印刷用のインキ
・対応できる素材や形状が多いため、家電や車など生活のさまざまな場面で使用される
・印刷物の表面を厚く塗って、重厚さの表現や耐久性の向上も可能
UVインキ・紫外線の照射ですぐ固まる特性を持つ
・乾いたインキの上に何度も重ね塗りをしてインキに立体感が出せる
・医薬品のパッケージや食品包材のほか、シールやラベルの印刷に用いられるときもある

以下の表で紹介するインキは、プリンターに使われるものです。

名称特徴
インクジェットプリンター用インキ・水溶性で粘度が低く、速乾性に優れている
・インキ代が比較的安価なことから、家庭・企業を問わず幅広く用いられている
レーザープリンター用インキ・トナーインキと呼ばれる樹脂製の粉末インキを使用する
・インキを吹きかけたドラムを用紙に押しつけて色を転写する
・インキの定着力や乾きの速さから、大量印刷にも向いている

このほかに、特殊な効果をもたらすインキとして以下のような特殊インキもあります。

名称特徴
耐光インキ・太陽光に強く、色褪せ防止に役立つ
・屋外ポスターなど屋外設置物に向いている
・顔料の性質上、通常のフルカラー印刷より鮮やかさが劣る場合がある
特色インキ・通常使用されるCMYKの4色ではなく、特別な調合で色の再現性を高めたインキ
・金や銀、蛍光などフルカラー印刷で出せない色の再現ができる
・シルバーインキの上にフルカラー印刷を重ねて、グラデーションなどメタリックな表現も可能

印刷インキの種類を知ることで、印刷物の目的や用途に合ったものを選ぶことができます。また、予期しないトラブルの中には最適なインキを選ぶことで避けられる事もあります。印刷インキの種類と特徴をよく確認し、イメージに合った印刷物を制作しましょう。

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環境に配慮した印刷インキの活用でブランディングが可能

近年、環境に配慮された印刷インキを使用する印刷会社が増えています。

これまで、印刷インキの環境問題として、大気汚染で人体に悪影響を及ぼすVOC(揮発性有機化合物)や重金属、環境ホルモンなどの含有が世界各国で指摘されてきました。

こうした問題への対処として、印刷業界は以下のような取り組みを行っています。

  • リサイクル可能な植物油や米ぬか油などをインキの成分に使用
  • 有機溶剤を含まない水性インキの利用
  • UVインキなどVOCを排出しないインキの利用

例えば、大豆油や亜麻仁油などの植物油と、使用後の油をリサイクルした再生油からできた「ベジタブルインキ」があります。石油系のインキと比べて環境にやさしいだけでなく、従来のインキと遜色なく鮮やかな色のデザインを表現可能です。また、このインキを使用しているマークを入れることができるため、使用する人にも環境に配慮した印刷物だと伝えることができます。

企業は自社の印刷物にこれらの印刷インキを使用すると、大気汚染の防止や地球温暖化対策などに貢献でき、エコ志向の企業としてブランドイメージ向上につなげられます。

対応可能な印刷インキは印刷会社によって異なるため、詳細は依頼先に問い合わせましょう。

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まとめ

インクとインキの違いや印刷インキの特徴を深く理解することで、イメージ通りの印刷物の制作につながります。

インキには一般的な印刷でよく使われるもののほかに、特殊な効果を持つインキもあります。印刷会社と相談して、自社のニーズに合ったものを選択してください。

近年は、地球にやさしいインキの研究開発も盛んに行われています。SDGsに取り組む企業の方やエコに関心が高い企業の方は、そうしたインキの活用も検討してみましょう。

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