印刷物も環境にやさしく|対応可能な企業の見分け方とメリット

印刷物も環境に優しく

SDGsへの関心が高まる中、環境保全に対応できる印刷物の制作を行いたいと検討している企業も少なくありません。しかし、どのような印刷会社に依頼すれば環境対応の印刷物が制作できるのかわからない方も多いことでしょう。

今回は、環境に配慮した印刷の種類や印刷会社の見分け方がわかるライセンスを紹介します。また環境対応した印刷物を制作する際のメリットや注意点も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

環境にやさしい印刷の種類と特徴

環境にやさしい印刷の種類と特徴を以下3つに分類して紹介します。

  • 印刷方法
  • 用紙や素材
  • インキ

環境に配慮した印刷物を制作する際に参考にしてください。

印刷方法

環境にやさしい印刷方法と特徴は以下、表の通りです。

印刷方法特徴
水なし印刷平版印刷の一種有害物質を含む水を使わない印刷方法処理費用を削減大ロット印刷に対応滲みがなく高精細
デジタル印刷版を作らない印刷方法小ロットから中ロット向き

一般的な平版印刷は、版に余分なインキが付着しないよう「湿し水(しめしみず)」と呼ばれる水を使用します。湿し水には有害物質が含まれているため「水質汚濁防止法」に従って、処理する必要があります。一方、水なし印刷は湿し水を使用せずに印刷できるため、処理コストや環境汚染のリスクを軽減可能です。

また、デジタル印刷は版を作成せずに印刷できる方法です。版の作成が不要になるため、印刷時に発生する有害物質や廃液の排出を抑制できます。特に、小ロットから中ロット印刷では、CO2の排出を減らす効果が高いとされています。

用紙や素材

環境にやさしい用紙や素材の種類や特徴は以下、表の通りです。

素材の種類特徴
森林認証紙木材パルプを原材料とした用紙適切な管理をされた森林から採取した木材チップを使用
非木材用紙木材以外の植物を原材料とした用紙竹や麻など使用している繊維によって異なる質感
リサイクル素材の用紙古紙や木材パルプを原材料とした用紙雑誌やトイレットペーパーなど多様な使い道

森林認証紙に使用される木材パルプは、ほかの素材と合わせて使用することも可能です。植物繊維と合わせた混抄紙やボタニカルペーパーも、木材パルプを使用した環境にやさしい用紙になります。

インキ

環境にやさしいインキの中で広く活用されているものは以下、表の通りです。

インキの種類特徴
UVインキ紫外線を照射して硬化させる有機溶剤を含まないため、乾燥時に有害物質が発生しない
植物油インキインキの中に植物由来の油が一定以上含有されている石油系と比較して、有害物質の排出がほとんどない
水性フレキソインキ有害物質の含有量がほとんどない油性インキに比べて、少ないインキの量で印刷できる

このような環境に対応したインキを使用することで、乾燥時の温室効果ガスの削減につながります。

それぞれの印刷方法、用紙、インキは全ての印刷で使用できる訳ではなく、印刷する内容や使用用途などによって選択することが必要です。

環境対応の印刷ができる企業の見分け方

印刷物を制作する際、環境対応した印刷会社へ依頼する必要があります。水なし印刷や森林認証紙など環境に配慮した印刷方法や用紙の取り扱いがある印刷会社は、それぞれに対応したマークを取得しています。

取得できるマークは大きく以下3つに分類されます。

  • 印刷方法に関するマーク
  • 用紙や素材に関するマーク
  • インキに関するマーク

それぞれについて解説します。

印刷方法に関するマーク

環境に対応した印刷に関するマーク(一例)は以下、表の通りです。

マーク特徴
バタフライマーク日本WPA協会による制度水なし印刷の機械を所有・対応している場合に付与
グリーンプリンティング一般社団法人日本印刷産業連合会による制度印刷工程全体の環境負荷を減らす取り組みに付与
クリオネマーク環境保護印刷推進協議会による制度環境にやさしいオフセット印刷に対応している場合に付与

環境に配慮した印刷方法による印刷物を制作したい場合は、これらのマークを取得している印刷会社を選ぶとよいでしょう。

用紙や素材に関するマーク

環境にやさしい用紙や素材に関するライセンスは以下、表の通りです。

マーク特徴
FSC®認証制度FSC(森林管理協議会)による制度森林管理を適切に行なっている森林から調達した原材料でできている用紙に付与
非木材グリーンマークNPO法人非木材グリーン協会による制度非木材パルプを使用した用紙に付与
バイオマスマーク日本バイオプラスチック協会による制度生物由来の原料が使用された素材に付与

これらのマークを取得している印刷会社は、環境対応の用紙を使用して印刷物の制作を行えるとわかります。また、使用する用紙に対して与えられるマークもあるため、用紙を選ぶ際に相談することがおすすめです。

インキに関するマーク

環境にやさしいインキに関するマークは以下、表の通りです。

マーク特徴
NL規制印刷インキ工業連合会が制定人体や環境に有害な成分を排除したインキに付与
植物油インキマーク印刷インキ工業連合会が制定植物油を使用したインキに付与
水性フレキソマーク水性フレキソ促進協議会が制定水性インキ使用のフレキソ印刷に付与

環境に配慮した印刷物の制作に一番取り入れやすいのは、上記のようなインキの使用です。取り扱っているインキは印刷方式、印刷会社によって異なります。

上記にあげたマークは一部です。多くの団体やメーカーで様々なマークが制定されています。作成する印刷物に合わせて、マークが使用可能な印刷方式や素材などを選択することが必要です。

環境対応の印刷をするメリット

環境にやさしい印刷を行うことは、企業の社会貢献はもちろん、若者へのアピールにつながります。環境に配慮した印刷方法や用紙、インキを選ぶことは、森林資源の保護や廃棄物削減に貢献できます。持続可能な社会の実現に向けた姿勢を、企業や個人へアピールできるでしょう。

また、近年は環境保全に対する意識が高い若者が多く、就職先の選定基準に社会貢献を重視する傾向があります。企業の取り組みを通じて、社会問題や環境問題の解決に貢献したいと考えている若者が増えています。

このように環境にやさしい印刷は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、人材確保や事業機会の創出にもつながるのです。

環境対応の印刷をする際の注意点

環境に対応した印刷物を制作するにあたり、注意しておきたいポイントは以下の2点です。

  • コストが高くなる
  • 印刷に制約がある

環境負荷を軽減しながら品質を維持した印刷はコストがかかります。また、環境対応の用紙や素材、インキは従来のものよりも価格が高めの傾向にあります。ただし、費用は印刷会社ごとに異なるため、依頼する際は複数の印刷会社に問い合わせるとよいでしょう。

環境にやさしい印刷には欠点があります。水なし印刷の場合、インキが固めのため紙が張り付いて破れてしまう場合があります。また、UVインキはインキが馴染む前に硬化するため、光沢感を出しにくい点がデメリットです。

これらの特性を踏まえて、専門知識を持つ印刷会社と相談しながら、環境にやさしい印刷方法や用紙を決めるとよいでしょう。

印刷とペーパーレスどっちが環境にやさしい?

印刷よりもペーパーレスの方が環境にやさしいと思われがちですが、必ずしもそうとは限りません。一般的にペーパーレスは用紙の使用量を抑えられるため、環境にやさしいと考えられています。しかし、電子機器の運用には電力が不可欠です。電力使用の増加に伴い、発電時のCO2の排出が増え環境汚染につながる恐れがあります。

ペーパーレス化を推進するだけでは、新たな環境問題が生じる可能性があるため、バランスの取れた対策が必要です。

  • 両面印刷にする
  • プロジェクターを使用する
  • 古紙は再利用する
  • こまめに電気を消す など

印刷とペーパーレスのメリット、デメリットを把握して、環境保全の取り組みを検討するとよいでしょう。

まとめ

環境にやさしい印刷にはさまざまな種類があるため、目的に合わせた方法を選びましょう。環境への取り組みに前向きな印刷会社を選ぶ際は、取得しているマークが参考になります。

用紙やインキを多く使用する印刷も環境にやさしい方法や素材を選べば、環境への取り組みとして企業や個人にアピールできます。

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