色校正は印刷物を制作する上で欠かせない工程の一つです。色校正を行えば、イメージと印刷物の色のズレを最小限に抑えられます。一度に数千枚〜数万枚印刷する場合、全て刷り終わってから「色が違う!」となると刷り直しには多くのコストと時間がかかってしまいます。そんな事態を避けるためにも指定の色に合わせないといけない印刷物などは事前の色の確認が必須です。
本記事では、色校正とはどのような工程なのか、色校正を行うべき理由やメリットを交えて解説します。色校正は制作物の品質だけでなく、売上や認知度の向上にも役立つ知識ですので、ぜひ参考にしてください。
色校正とは?
色校正とは、印刷物の色味が正しく出力されているのか量産前に確認する工程を表します。一般的なカラープリンターでは、そもそものインキが違うため、印刷物で再現したい正しい色の出力はできません。専門の印刷業者に依頼して行うのが一般的です。
デザインの現場では、色校正のほかに「校正」「校閲」と呼ばれる工程があります。校正や校閲では、印刷物のレイアウトや誤字脱字のチェックのほか、内容の事実確認が行われます。
色校正と校正は別の工程であると把握しておきましょう。
印刷物の色校正をするべき3つの理由
色校正を行う理由は、主に以下3つが挙げられます。
- モニターと印刷では発色が異なるため
- 印刷する紙質によって色の出方が変わるため
- 刷り直しのリスクを避けるため
それぞれの理由を詳しく解説します。
モニターと印刷では発色が異なるため
パソコンのモニターやスマートフォンに映し出される色は、レッド・ブルー・イエロー(RGB)の光で再現されています。一方、印刷はシアン・マゼンタ・イエロー・ブラック(CMYK)のインキを使用して、色の再現を行います。
このように色の再現方法がモニターと印刷では異なるため、印刷物を取り扱う際は、色校正による色の確認が必要です。
さらに、同じ種類のモニターであっても、それぞれ映し出される色は異なります。印刷物の色がイメージ通りになるようにしたい場合は、色校正を行って調整する必要があります。
印刷する紙質によって色の出方が変わるため
印刷用の用紙はさまざまな種類があり、紙の質感によって仕上がりも変わります。同じインキを使用した場合でも、光沢感のある紙やマットな質感の紙では色ののり方は異なります。
さらに、光の当たり方によっても色の見え方が左右されるため、再現したい色なのか色校正を行って確認した方が安心でしょう。
刷り直しのリスクを避けるため
WebサイトやWeb広告は、公開したあとでも間違いを見つけた場合はすぐに修正が可能です。しかし、印刷物は刷り直しが必要になるケースもあり、その場合は印刷費や輸送費などの追加コストが発生します。
校正に加えて、色校正も行うことで、このようなトラブルは回避できます。色の見え方は人によってもそれぞれ異なるため、色校正を行い、共通認識を持っておくとよいでしょう。
色校正を出した方がよい印刷物の特徴
色校正は必ず必要というわけではありません。しかし、色校正に出した方が安心な場合もあります。以下に当てはまる印刷をする際は、専門の印刷会社へ色校正を出した方がよいでしょう。
- 写真やイラストなどビジュアル重視の印刷
- 微妙な色の違いを表現する印刷
- まとまった部数の印刷
それぞれの理由を解説します。
写真やイラストなどビジュアル重視の印刷
写真やイラストなど画像が中心の印刷物は、繊細なグラデーションの再現が求められます。わずかな色のズレが品質を左右するため、色校正をした方が安全です。特に微細なグラデーションは、印刷と一般的なプリンターやモニターでは再現度も異なります。
色校正なしで制作を進めた場合、実際の印刷と見比べて「イメージと違う」などのクレームになりかねません。ビジュアル重視の印刷をするなら、色校正も制作工程に入れると安心できます。
微妙な色の違いを表現する印刷
色の些細な誤差が消費者の購買意欲を左右する場合があります。特に、食品や化粧品などの印刷を行う際は、色の取り扱いに注意が必要です。
商品に対する消費者が思うイメージと印刷物のイメージがマッチすれば、購入につながる可能性が高くなります。また、色は色見本帳を利用し、指定色で修正指示を伝えることも可能です。
特殊な紙や異素材の印刷
特殊な紙や凹凸があるものへの印刷は、専用のインキや機械を用いて印刷することもあるため、モニターで再現される色と同じ色にはなりません。
また、モニター上のデータすべてが印刷物に再現できない可能性もあります。特殊な紙や異素材に印刷する場合も色校正をして確認した方が無難でしょう。
種類の色校正の違いはコストとクオリティ
色校正は大きく分けると以下の3種類があります。
- 簡易色校正
- 本紙色校正
- 本機色校正
それぞれの色校正の違いとメリット・デメリットについて詳しく解説をします。費用や目的に合わせた方法で色校正を行いましょう。
簡易色校正
高精度なインクジェットプリンターで行われる簡易色校正は、本番用の紙を使わずに行われます。簡易色校正のメリットとデメリットは以下、表の通りです。
メリット | 最も安い 納期が早い |
デメリット | 実際の印刷とは異なるため、再現性はやや低い 特殊な紙や紙以外の印刷には使えない |
予算が限られている場合や厳密さを求められない印刷では、簡易色校正もよいでしょう。
ただし、簡易色校正は専用の紙で行うため、特殊な紙や紙以外の素材には対応できません。
本紙色校正
本番用の紙を使用して行う本紙色校正は、本紙校正専用の印刷機械を用いて色校正を行います。本紙色校正のメリットとデメリットは以下、表の通りです。
メリット | 紙質を含めた印刷結果をイメージできる 特殊な紙でも行える |
デメリット | 簡易色校正よりコストが高い 本機色校正より色の再現性はやや低い |
本紙色校正で使われる機械は、実際の印刷機とは別物です。紙質と色の見え方は確かめられますが、本機色校正より再現性はやや劣ります。
本機色校正
本機色校正は、本番の印刷と同じ機械と紙を用いて行う色校正です。本機色校正のメリットとデメリットは以下、表の通りです。
メリット | 色の再現性が最も高い実際の印刷物をイメージしやすい 特殊な色の印刷にも対応している印刷する素材を選ばない |
デメリット | 最もコストが高い 納期がかかる |
クオリティを重視する印刷が必要な場合は、本機色校正が向いています。
色校正を行うメリット
色校正はコストがかかります。しかし、色校正をすることで、以下2つのメリットを得られます。
- 言葉で伝えられない情報を伝えられる
- 消費者の購買意欲を高める
色校正を制作工程にプラスすることで、言葉では伝えきれない多くの情報を「色」を通して発信できるでしょう。それぞれのメリットを紹介します。
言葉だけでは伝わらない情報を伝えられる
視覚から得られる情報はさまざまで、色がもつイメージを人物や物と紐づけることも可能です。例えば、紫色のイメージに上品や女性的、妖艶などのイメージをもつ方も多いでしょう。紫色のもつイメージを戦略的に活用し、女性向けの商品やパッケージに取り入れると、高級感や気品さをアピールできます。
しかし紫色にも薄い、濃いなどさまざまなバリエーションがあります。商品のイメージやデザイナーの意図した色を的確に反映した色で印刷物を作成することはとても重要です。個人によって鮮やかさや明るさ、青よりや赤よりといったイメージに違いがあります。色校正をすることで、互いの色イメージを擦り合わせイメージ通りの色を再現しやすくなります。
消費者の購買意欲を高める
人が商品や広告に目を止める時間は一瞬です。そのため、商品や広告は第一印象が大切です。視認性を高めるデザインやレイアウトも大切ですが、消費者の心を動かすためには色も欠かせない要素の一つです。
色校正を行うことで部分的な色の強弱の修正や肌の色を整えたり、明るさを調整するなど、細かい修正も可能です。色校正で商品のもつ魅力を高めることは、消費者の購買意欲につながります。
コストはかかりますが、色校正で得られるメリットは多いでしょう。
色校正の注意点
光(照明)によって色の見え方が変わる
色は見る場所の照明の明るさ、使用している照明の種類によっても違って見えます。
一般的に印刷物は5000K程度の照明の下で見ると良いとされています。これは午後の自然光くらいの明るさとされています。
印刷会社によっては印刷工場の照明をこの照明にしていたり、色を見るための「色見台」を設置している場合があります。色校正は複数回行う場合もあり、常に同じ条件の照明で確認することが必要です。
また自然光の元で確認することもありますが、こちらは天気によって明るさが変わるため注意が必要です。印刷されたものが店頭などで陳列される場合はその場所に合わせた明るさで色をチェックすることも大切です。
色は見る場所や人によって違って見えることがあるため、色を確認する際の基準を定めて色校正を行うことをお勧めします。
まとめ
モニターに映し出された色は、光で作られているため、インキでは再現できません。そのため、色校正によって正しい色の確認をすることが大切です。
色校正は3種類あり、コストや色の再現性はそれぞれ異なります。シールやパッケージなどの印刷物を制作する際は、色校正が必要なのかも併せて検討しましょう。