化粧品ラベルは、消費者に必要な情報や商品の魅力を伝える大切な役割を担っています。一方で、「表示ルールが複雑で理解しにくい」「デザイン方法がわからない」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。
本記事では、化粧品ラベルの表示ルールとデザイン・印刷のコツなどをわかりやすく説明します。ガイドラインに沿った魅力的な化粧品ラベルを制作できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事は2025年7月時点の公表情報をもとに執筆しています。最新の制度の内容は、厚生労働省や各業界団体のホームページを併せてご確認ください。
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化粧品ラベルとは

化粧品ラベルとは、製品の情報を消費者へ伝えるために、パッケージやボトルに貼付されたラベルです。魅力的なオリジナルデザインによって、消費者の目を引く役割もあります。
一般的な化粧品ラベルは、表ラベルと裏ラベルの2種類による構成です。
種類 | 概要 |
表ラベル | 商品名や商品のイメージを表現したデザインが描かれている |
裏ラベル | 消費者の安全を守るために法令で定められた項目が記載されている |
ボトル容器の場合、表ラベルと裏ラベルを1枚にまとめたものを使用することもあります。
市販の化粧品には、こうしたラベルのほかに、特徴をアピールするアテンションシールや未開封を示す封緘シールなどが使用されています。

化粧品ラベルの表示ルール

化粧品ラベルには、薬機法や事業者団体のガイドラインにより、表示ルールが定められています。表示ルールは、消費者の安全やメーカーの公正な取引競争を守るためのものです。
化粧品は肌に直接触れる物のため、成分情報や製造者などの重要な情報を消費者に示さなければなりません。リサイクル可能な製品であれば、リサイクルマークの記載も必要です。
また、表示事項は読みやすい文字で記載し、ラベルは見やすい場所に貼ることが求められます。ゴシック体の使用や適度な行間の確保など、消費者が理解しやすくなるように工夫をしましょう。
なお、ラベルは化粧品本体・外箱・包装紙のいずれかに貼り付けます。化粧品本体にラベルを貼っていても、販売時に包装で本体が見えなくなる場合は、外箱・包装紙への貼付が必須です。
ここからは、表示ルールの概観を掴めるように、基本的な表示項目を紹介していきます。
参照:e-Gov法令検索「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)
参照:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約」(以下、公正競争規約)
参照:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」(以下、公正競争規約施行規則)
参照:化粧石鹸洗剤工業会「化粧石けんの適正包装規則」
1.製造販売業者の氏名(名称)と住所
薬機法第61条では、製造販売の許可を受けた個人名(または法人名)と住所を記載するよう定められています。化粧品ラベルの表示面積が小さくて名称が書ききれない場合は、略称や商標登録名称でもかまいません。
また、公正競争規約第4条に基づき、発売元情報・製造販売元情報・原産国名・問い合わせ先の記載も必要です。
2.名称
化粧品ラベルに表示する名称は、「製造販売届出」を出した時に記載した製品の名称です。名称は略称での記載が認められていない点に注意する必要があります。
また、公正競争規約施行規則第2条では、種類別名称の記載も求められています。種類別名称は化粧品の種類を示すもので、「整髪料」「化粧水」「乳液」などがカテゴリー例としてあげられます。公正競争規約施行規則別表1で、カテゴリー一覧の確認が可能です。
名称に関する文字の大きさは、いずれも7pt以上と規定されています。ただし、7pt以上の記載が難しい合理的な理由が認められれば、4.5pt以上での記載も可能です。
参照:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表1【種類別名称】」
3.製造番号または製造記号
製造番号または製造記号も、化粧品ラベルに記載が必要な事項です。製品に問題があった場合や回収の必要性が生じた場合、製造番号・製造記号があれば迅速な対応ができます。
製造番号・製造記号の決め方に別段の定めはありません。生産工場や生産日時が特定できるように、アルファベット・数字などを用いた社内ルールを取り決めておくとよいでしょう。
4.成分の名称
化粧品ラベルに表示が義務付けられている成分の名称について、薬機法61条では「厚生労働大臣の指定する成分が含まれている場合」と記載されています。
化粧品に関する指定成分は「全成分」と定められています。そのため、基本的に化粧品に含有される成分はすべて表示が義務です。
成分名に関する代表的なルールには、以下があげられます。
- 記載順序は配合量の多い順
- 着色剤・配合量が1%未満の成分は順不同
- 成分名は日本化粧品工業会が作成した「化粧品の成分表示名称リスト」を参考に記載
成分名称の表示ルールは、このほかにも細かい定めがあります。化粧品ラベルを制作する際は、以下のページや日本化粧品工業会の公式ホームページを確認しましょう。
参照:厚生労働省「平成12年厚生労働省告示第332号」
参照:厚生労働省「化粧品の全成分表示の表示方法等について」
5.使用の期限
使用期限を記載しなければならない化粧品は、以下の3種類です。
- アスコルビン酸・そのエステル・それらの塩類を含む化粧品
- 酵素を含む化粧品
- 製造または輸入後、3年以内に性状・品質が劣化する恐れがある製品(適切な保存条件によるもの)
これらの条件に当たらない化粧品には、使用期限の表示義務はありません。
なお、法律で定められている項目ではありませんが、化粧品の使用期限は「未開封」を条件に定めている場合が一般的です。そのため、化粧品ラベルに「開封後はお早めにご利用ください」といった注意書きを入れることもあります。
参照:厚生労働省「昭和55年厚生省告示第166号」
※記載の自治体名は当時の名称による
6.薬機法の特定基準により定められた事項
薬機法第42条第2項には「厚生労働大臣は、保健衛生上の危害を防止するため、化粧品の性状・品質・性能に関する基準を決めることができる」旨が定められています。これらの事項も化粧品ラベルへの記載が必要です。
薬機法をもとに「化粧品基準」が告示されています。記載されている主な内容には、以下があげられます。
- 防腐剤・紫外線吸収剤・タール色素の配合制限
- 禁止配合物
- 配合制限のある物質
より詳細は以下のページを参考にしましょう。
参照:厚生労働省「化粧品基準」
※記載の自治体名は当時の名称による
7.外国特例承認取得者等の氏名等
薬機法第19条の2では「外国で化粧品を製造している事業者が日本に製品を輸出する際に、品目ごとに厚生労働大臣の承認を与えることができる」旨が定められています。
同法を根拠に承認を受けた外国人・外国法人は、氏名等の記載をしなければなりません。
8.内容量の記載
公正競争規約第4条では、内容量の記載が義務づけられています。
記載方法について、重量は「g」または「グラム」で、体積は「ml」または「ミリリットル」で記載します。シートパックなど数量単位の化粧品であれば、個数表示が可能です。
また、公正競争規約施行規則第5条では、内容量の記載に関する細かいルールが定められているため、参考にしましょう。
参照:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」
9.使用上または保管上の注意
消費者の健康と安全のため、使用上または保管上の注意事項も記載が必要です。
例えば、リップケア商品の場合には「唇に異常が現れたときは使用をおやめください」などと記載します。
公正競争規約施行規則別表2を読めば、注意事項の表示例が化粧品の種類ごとに確認できます。詳細は以下のリンクをご覧ください。
参照:化粧品公正取引協議会「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則 別表2【使用上又は保管上の注意】」
魅力的な化粧品ラベルのデザイン・印刷のコツ

魅力的な化粧品ラベルのデザイン・印刷のコツには、以下の3つがあげられます。
- ターゲットやコンセプトに合ったデザインにする
- デザインが際立つ素材と加工を選ぶ
- 偽造防止印刷を取り入れる
コツを押さえて、消費者の目を引きつけるラベルを作成しましょう。それぞれ詳しく解説します。
ターゲットやコンセプトに合ったデザインにする
訴求力の高い化粧品ラベルを作成するには、ターゲットや化粧品のコンセプトを意識したデザイン制作が重要です。
具体的には、主なターゲット層の性別や年齢層、嗜好などを分析する必要があります。以下は、ターゲットを意識したデザインの一例です。
商品 | デザイン |
若い女性向けの美白化粧水 | 親近感・清潔感・白さを主軸にしたデザイン |
年配男性向けの保湿液 | 渋み・落ち着き・高級感あふれるデザイン |
また、コンセプトは化粧品の価値を言語化したもので、デザインのアイディアに取り入れると効果的です。
例えば「ポジティブな気分になれる明るいコスメ」の場合、ビタミンカラーを基調にするとイメージに合致します。また「肌に優しい天然成分配合」を打ち出したいなら、ナチュラルで柔らかい色を基調にしたデザインがおすすめです。
このように、化粧品の特徴からデザインを逆算して考える意識を持ちましょう。


デザインが際立つ素材と加工を選ぶ
魅力的な化粧品ラベルを作成するためには、デザインを引き立たせる印刷素材・加工の選択も重要なポイントです。
例えば、高級感を出したい場合や優しい手触りを重視したい場合は、耐水性・耐薬品性があるタイベックシール紙が向いています。また、ラベルに華やかなアテンションシールを用いるなら、ホログラム材質を選ぶのもよいでしょう。
もし耐水性をさらに強化したいのであれば、表面保護の効果があるラミネート加工を施すのもおすすめです。
化粧品ラベルの印刷素材や加工は、デザインを考慮した検討が必要です。印刷会社に相談すれば、自社に合ったものを提案してもらえる可能性があります。


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偽造防止印刷を取り入れる
近年、化粧品のコピー商品やすり替えを防ぐために、偽造防止印刷も積極的に活用されています。ラベルに特殊な素材や技術を組み合わせることで、企業のブランド保護と偽造リスクの回避が可能です。
具体的には、ホログラムの特殊な箔加工を用いたり、ブラックライトを当てた時に光る特殊なインキ「インビジブルインキ」を使用したりします。インビジブルインキの場合、マークやQRコードを印刷して真贋判定に用います。
ほかにも、一般的な印刷機では再現しにくい微細なイラストやマイクロ文字などを印刷する方法も効果的です。

まとめ

化粧品ラベルを制作する際、表示ルールに沿って記載事項を確定した上で、商品の魅力が伝わるオリジナルデザインを考える必要があります。
自社でノウハウや経験がない場合には、デザインから印刷まで一貫して対応できる印刷会社に任せるのも選択肢の一つです。魅力的な化粧品ラベルによって、自社商品のブランディング強化や売上向上をめざしましょう。