偽造防止印刷(セキュリティ印刷)は、企業にとって自社のブランド価値や情報を守るために有効な手段です。
しかし、一口に偽造防止印刷といっても、その種類は多岐にわたります。「どの方法を用いたらよいのか」「どういった場面で使えばよいのか」など悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、偽造防止印刷の概要や制作例、種類、印刷会社へ依頼するコツなど基本的な知識を解説します。
偽造防止印刷(セキュリティ印刷)とは

偽造防止印刷(セキュリティ印刷)とは、制作物のコピーや改ざんなどを防ぐために施す印刷技術です。コピー機の性能が向上した現代社会において、コピーガードや特殊印刷といった偽造対策は企業にとって必須といえるでしょう。
仮に自社ブランドの複製品を悪用されたら、消費者からブランドに悪いイメージを持たれる可能性があります。また、複製品が販売されることで本物と複製品が競合してしまい、利益損失につながる場合も考えられます。
偽造防止印刷は、企業の信頼とブランドイメージを守り、成長につなげるための有効な手段です。
偽造防止印刷の制作例

偽造防止印刷(セキュリティ印刷)の制作例として、下記の3つを紹介します。
- セキュリティパッケージ
- セキュリティシール
- 証紙・版権シール
一般的に偽造防止といえば紙幣や身分証などが知られていますが、実はほかにもさまざまな場面で偽造防止印刷が行われています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
セキュリティパッケージ
化粧箱や包み紙といった商品パッケージに偽造防止印刷を用いる企業は数多くあります。パッケージにセキュリティ対策を行うことで、偽造品の製造抑止はもちろん、正規品の証明にもつながるためです。
偽造防止にホログラムやメタリックなどの加工を用いれば、セキュリティ対策になるだけでなく、華やかなパッケージにも仕上がります。
セキュリティシール
セキュリティシールとは、開封厳禁の封書や改ざん防止目的で使用されるシールのことです。「開封無効」の意味でVOIDシールと呼ぶ場合もあります。
セキュリティシールの主な目的は、中身のすり替えや異物混入の防止、個人情報保護などです。例えば化粧品のパッケージやボトルは、販売までに開封されて中身をすり替えられるリスクがあるため、すり替え防止にセキュリティシールを用いる場合があります。
シールを剥がすと跡が残ったり文字が浮き上がったりするため、シールの偽造は困難です。また、剥がすとシール素材が崩れるものや再度貼れないシールなどもあります。
証紙・版権シール
証紙シール・版権シールとは、企業のライセンスを証明するシールのことです。このシールが貼られた製品は、その企業の正規品であると認識されます。
証紙・版権シールを作成する場合は、偽造防止・セキュリティ対策を入念に行いましょう。よく見かけるタイプは、金や銀、蛍光などのホログラム加工を施した小さなシールです。
偽造防止印刷の種類

偽造防止印刷(セキュリティ印刷)の種類と特徴について、以下のカテゴリに分けて解説します。
- 特殊インキ
- 特殊印刷
- 特殊加工
- 偽造防止用紙
- 透かし
偽造防止印刷は、さまざまな技術を用いて行われます。具体的にどういった印刷方法があるのか、どのような特徴を持っているのかなど、セキュリティ対策時の参考にしてください。
特殊インキ
偽造防止効果を有する特殊な性質のインキを使う印刷方法があります。使用されるインキのタイプはさまざまですが、下記のインキがよく使用される傾向です。
インキの種類 | 特徴 |
特殊発光インキ | ・通常時は透明だが、ブラックライト(紫外線)で照射すると表示される ・紙幣や証券などには、一見普通の色インキだが特殊ライトに照らすと蛍光色に光るインキが用いられている |
特色インキ | ・コピーや4色印刷では表現できない金・銀・蛍光色などの特色インキを使用する ・コピー機などで複製すると特色の色がくすんで見えるため、偽造防止に役立つ |
透明インキ | ・無色のインキにより、ツヤや手触りの違いなどを表現する ・複製では透明インキの出す効果まで再現が難しいため、偽造防止につながる |
磁気インキ | ・鉄などの微細な粒子を使った黒インキであり、磁気検出器を使用して読み取る ・銀行小切手などに採用され、磁気検出器を通して反応がなければ偽造小切手と判断できる |
印刷会社によって対応可能なインキや使用する場面・条件が異なるため、特殊インキを使用する場合は印刷会社によく相談しましょう。

特殊印刷
セキュリティ対策に用いられる主な特殊印刷の方法は、以下のとおりです。
印刷方法 | 特徴 |
コピーガード印刷(隠し文字) | ・人の目では判別しにくい細かい点や線で文字を印刷する手法 ・コピーすると隠れた文字が現れる ・自治体が発行する証明書や金券などによく使われる |
マイクロ文字印刷 | ・人の目では見えない極小の文字を印刷する手法 ・非常に小さい文字のため、一般的な印刷機では再現が難しい ・お札や証明書のほかに、シールなどのデザインの隅に印刷される場合もある |
重要書類やクーポン券などを印刷するなら、特殊印刷によるセキュリティ対策が候補に挙げられます。
特殊加工
特殊加工はコピー機や一般的な印刷機による再現が難しいため、偽造防止に役立ちます。
特殊加工の種類は、主に以下のとおりです。
加工の種類 | 特徴 |
箔押し加工 | ・紙の上に金や銀などの箔を乗せて圧をかける加工方法 ・箔の種類や圧力の違いなどにより同じ箔を再現するのは難しいため、偽造防止につながる |
エンボス加工 | ・紙やフィルムなどの印刷素材を凹凸の金属板で挟み、立体的な図や文字を表現する加工方法 ・凹凸があるため偽造が難しい |
レーザー加工 | ・レーザーで表面を削ったり彫り進めたりと深さを調節し、複雑な凹凸を作る加工方法 ・偽造防止になるだけでなく、彫刻のような独特なデザインも演出できる |
なお、箔押しにオリジナルの箔を用いると高度なセキュリティ対策になるものの、作成には時間とコストがかかります。
時間とコストが気になる場合、既成の箔の中からホログラムを用いる方法もあります。ホログラムは色の再現が難しいため、偽造防止に効果的です。


偽造防止用紙
偽造防止用紙とは、セキュリティ対策を施した印刷用紙のことです。
見た目は何も書かれていない普通の紙です。しかしコピー機で複製すると「複製厳禁」「COPY」など隠れた文字が浮き上がってくるため、書類が複製・改ざんされたと判断ができます。
企業の機密情報や個人情報などを記載する重要書類によく使用されています。
透かし
透かしとは、紙の厚さなどを変化させて白黒を表現する手法のことです。白黒の透かしを入れると、見る角度を変えたり光に透かしたりすることで絵や文字が現れるため、本物か偽造か判断できます。
お札以外だと、証明書等の重要書類や有価証券、便せんの加工などに用いられています。
偽造防止印刷を印刷会社へ依頼するコツ

偽造防止印刷(セキュリティ印刷)を依頼する場合、まずは自社のニーズに合った印刷会社をみつけることが重要です。印刷会社によって、対応できる偽造防止印刷や得意ジャンルが異なるからです。
印刷会社のホームページを参考にしたりサンプルを取り寄せたりして、複数の選択肢をリストアップする必要があります。印刷会社によってはデザインの段階から依頼できるため、デザインに困っている場合は、対応可能な印刷会社を検討しましょう。
また、偽造防止印刷は、単体の技術でもセキュリティ効果を得られるものの、複数組み合わせた方が効果は高まります。
印刷会社に制作目的を伝えれば、デザイン性と安全性を両立した効果的な提案を受けられる可能性もあります。技術の選択や組み合わせに迷った場合は、印刷会社に相談しましょう。
ただし、用いる技術が増えれば増えるほどコストもかかってしまいます。セキュリティ対策は、予算と照らし合わせながら無理のない範囲で行うことが大切です。
まとめ

偽造防止印刷(セキュリティ印刷)は、デジタル技術が発達した現代社会のセキュリティに重要な役割を果たします。企業は自社のブランドを守り育てるため、入念なセキュリティ対策が必要です。
偽造防止印刷には、特殊なインキを使ったものや特殊印刷・加工などさまざまな方法があります。技術をいくつか組み合わせて、高度なセキュリティ対策を行うことが重要です。
印刷会社にできる限り具体的に要望を伝え、目的に合った印刷物を制作しましょう。