バリアブル印刷（可変印刷）は1部ごとに文字や画像を変えて印刷する方法であり、企業の日常的な業務から広告までさまざまな場面で用いられています。
一方で「具体的な活用方法がわからない」「どう依頼したらよいか知りたい」などと悩まれている方もいるでしょう。
この記事では、バリアブル印刷の概要や仕組み、活用例、依頼に必要な準備などをわかりやすく解説します。自社のマーケティング戦略や業務効率化にバリアブル印刷を活用できるよう、ぜひ最後までご覧ください。
バリアブル印刷（可変印刷）とは
バリアブル印刷とは、印刷物1部ごとに内容やデザインを変える印刷手法です。「変えられる」を意味する英単語「variable」に由来しており、可変印刷とも呼ばれます。
身近な例として、Microsoft Wordの「差し込み印刷」（文書の一部に異なるデータを挿入する方法）や、番号が記載されたチケット印刷などがバリアブル印刷の一種です。
印刷会社では、デジタルデータを直接印刷するオンデマンド印刷（デジタル印刷）によってバリアブル印刷に対応しています。顧客データをもとに個人のニーズに合わせたアプローチができるため、企業のマーケティングにも広く活用されています。
また最近は印刷機のデジタル化によって従来のテキストを変更する以外のバリアブル印刷も多くなってきています。使い方によっては様々なケースで使用できる可能性があります。
バリアブル印刷の仕組み
バリアブル印刷（可変印刷）は、共通の「ベースデザイン」と、一部ごとに内容を変える「可変部分」を組み合わせて作られます。
ベースデザインは、文字やイラスト、画像などを含む全体のレイアウトを指します。通常の印刷物と同様に、印刷版を用いたオフセット印刷で刷るケースが一般的です。
一方で、宛名やバーコードなどの可変部分は、Microsoft ExcelやCSV形式のデータを用いて、オンデマンド印刷（デジタル印刷）で追加します。
2種類の印刷方法の併用により、内容の異なる印刷物を効率的に制作するのがバリアブル印刷の仕組みです。
バリアブル印刷の活用事例
バリアブル印刷（可変印刷）の活用例として、以下の5つを解説します。
- DM（ダイレクトメール）の制作
- 名刺や社員証の印刷
- チケットやくじのナンバリング
- QRコードやバーコードの印刷
- 特殊なバリアブル印刷
それぞれ詳しく見ていきましょう。
DM（ダイレクトメール）の制作
バリアブル印刷は、企業のDM（ダイレクトメール）制作で広く用いられています。宛名印刷はもちろん、DMに盛り込む訴求内容の差し替えも可能です。
例えば、顧客の購入履歴などのデータを活用して、ニーズに合ったクーポンを印刷したり、地域ごとに異なる店舗情報を掲載したりなど、印刷物のカスタマイズが可能です。
これにより、宛名書きなどの作業負担や仕分けの手間を減らせるだけでなく、顧客ごとの状況に合わせたパーソナライズド広告を打ち出せます。
名刺や社員証の印刷
社員名簿のデータを活用したバリアブル印刷により、名刺や社員証なども効率よく作成できます。
会社名やロゴなどを印刷したベースデザインを用いつつ、氏名や役職などの可変部分は社員リストの情報をもとに印刷します。社員の異動にともなう記載の変更にも柔軟に対応可能です。
また、バリアブル印刷では、文字サイズを変えたり、写真を挿入したりといったデザイン変更もできます。
同じ社員名簿をもとに名刺と社員証をまとめて作成できるなど、汎用性の高さも魅力です。
チケットやくじのナンバリング
バリアブル印刷は、チケットやくじ、クーポンなどのナンバリングにも活用されています。
ナンバリングは販売数の管理に役立つのはもちろん、偽造防止などのセキュリティ対策にも有効です。
また、バリアブル印刷によりチケットに一定のルールで連番をつけると、チケットの回収後に顧客の分析に活用できます。例えば、チケットの販売チャネルや地域ごとの発行数などを数値で把握でき、マーケティング施策の改善に活かせるでしょう。
QRコードやバーコードの印刷
バリアブル印刷により、QRコードやバーコードを1部ずつ異なるものにした印刷物の制作も可能です。
例えば、バリアブル印刷で地域・年齢層ごとに異なるQRコードを印字すれば、アクセス数から反応の良い地域・年齢層を分析できます。アクセス数を把握できるメリットを活かして、購入につながる客層の掘り起こしなどにも使えます。
また、イベントの入場チケットにそれぞれ異なるQRコードやバーコードを印字して、入場時に読み取る方法も有効です。顧客の情報をコードに紐づけて、入場の管理に活用できます。
そのほか、QRコードやバーコードは製品の製造やトレーサビリティ（製造から流通までの過程を追跡できる仕組み）にも取り入れられ、効率的な生産や品質管理に役立っています。
特殊なバリアブル印刷
宛名やナンバリング、コードではなく、デザインの一部に変化を加える特殊なバリアブル印刷もあります。
デザインのバリアブル印刷は、ベースデザインは共通で、一部の色や画像を差し替える印刷方法です。指定した場所の色を差し替える「カラーシャッフル印刷」や、ベースとなる画像の一部を拡大・回転させて変化をもたせる「モザイク印刷」などがあげられます。
これらは、デザインの自動生成で多くのバリエーションを生み出せるため、通常の印刷では得られない遊び心のある印刷物の制作が可能です。
食品や日用品の定番パッケージはもちろん、デザイン性を活かした限定品やアテンションシールなどに用いるのも効果的でしょう。
バリアブル印刷を活用するメリット
バリアブル印刷（可変印刷）には、以下のようなメリットがあります。
- 多様なニーズに合わせた印刷ができる
- 商品に付加価値を与えられる
それぞれ詳しく解説します。
多様なニーズに合わせた印刷ができる
バリアブル印刷により、顧客リストの情報をもとに、ニーズに合わせて内容を少しずつ変えた印刷物を制作可能です。誰にでも当てはまる内容よりも、ひとり一人のニーズに寄り添うメッセージの方が記憶に残りやすく、反応率も高められます。
例えば、DMの場合、顧客の性別や家族構成、購入履歴などをもとに、提供する最新情報やクーポンの内容を変更する方法が効果的です。
商品に付加価値を与えられる
バリアブル印刷で商品のナンバリングやデザインに変化をもたせると、特別感を演出できます。
同じ商品であっても、特定のナンバリングがされた商品は一つしか存在しないため、顧客にとって付加価値となります。
また、パッケージやラベルのデザインにバリエーションを持たせる方法も販売促進において有効です。例えば、印刷するキャラクターの種類を増やせば、「全種類集めたい」といった心理をくすぐれるため、購入のきっかけになります。
バリアブル印刷の注意点
バリアブル印刷（可変印刷）の際には、以下の2点に注意が必要です。
- レイアウトが崩れる場合がある
- 印刷できない書体や特殊文字がある
バリアブル印刷は印字できる範囲に制約があり、文字数が多すぎるとレイアウトが崩れる場合があります。特に、住所や氏名は宛名ごとに文字数が変わるため、印字範囲に余裕をもったレイアウトや文字サイズの設定がポイントです。
また、商業印刷に使われる一般的な書体は印刷できるものの、対応できない書体や特殊文字が存在します。例えば、かな書体や欧文書体といった特殊なフォント、旧字体などは、文字化けすることがあります。
ただし、バリアブル印刷に使える書体は印刷会社ごとに異なるため、依頼先とすり合わせしましょう。
バリアブル印刷を依頼する際に必要な準備
バリアブル印刷（可変印刷）を印刷会社に依頼する際には、ベースデザインと可変部分のデータがそれぞれ必要です。
ベースデザインは、印刷会社にデザイン制作を任せられる場合があります。一方で、可変部分は社員や顧客の個人情報に関わるため、自社でデータを準備して提出するケースが一般的です。
自社でデータ作成する場合には、例えば以下の点に注意しましょう。
- Microsoft ExcelやCSV形式では、苗字と名前のセルを分ける
- スペースや英数字は、全角と半角の混在を避ける
- 画像を入れる場合はサイズを統一する
データ作成のルールは印刷会社によって異なります。バリアブル印刷の対応実績がある印刷会社を選び、事前に相談をしながら進めるとよいでしょう。
まとめ
バリアブル印刷（可変印刷）は、顧客ひとり一人に合わせた印刷物の制作が可能な手法であり、DMや名刺、チケットなどに活用されています。宛名やQRコードなどの文字情報だけでなく、デザインの一部を変更してバリエーションをもたせた表現も可能です。
顧客に合わせた印刷物のパーソナライズ化が実現し、商品の付加価値を高める効果があります。本記事を参考にバリアブル印刷を採用して、自社のマーケティング戦略を強化しましょう。