マルチシール(マルチステッカー)とは、1つのシートに複数のシールやステッカーを印刷したもので、企業のマーケティングツールとしても用いられます。
一方で、企業担当者の中には「どういうときに使えるのか」「デザイン・印刷方法がわからない」と悩む方もいるでしょう。
そこで本記事では、マルチシールの概要や用途、印刷の基礎知識、デザインの注意点などを詳しく解説します。自社の成長につながるシールを制作できるよう、ぜひご覧ください。
マルチシールとは

マルチシールとは、1つのシート上に複数のデザインのシールが印刷されているもので、「マルチタイプ」とも呼ばれます。マルチタイプに対し、1つのデザインごとに型抜きをして切り離したシールは「ダイカット」や「シングルタイプ」と呼ばれます。
マルチシールのデザインは、同じ柄を並べる場合もあれば、複数の柄を自由なレイアウトで並べる場合もあります。
マルチシールにはハーフカットの切り込みを入れるため、シールが剥がしやすく実用的です。ハーフカットとは、台紙はそのままでシールにのみ切り込みを入れる手法です。
なお、マルチシールはマルチステッカーと呼ばれる場合もあります。マルチシールとマルチステッカーに明確な違いはなく、同じものを指すのが一般的です。
ただし印刷会社によっては、屋内向けのものをマルチシール、屋外向けで耐久性があるものをマルチステッカーと分けて呼ぶことがあります。
また、そもそもマルチシールとは呼ばず「多面付けシール」や「集合シール」など別の名称を用いる場合があるため、事前に確認をした方がよいでしょう。

マルチシールの用途

多くの企業がマーケティング強化のためにマルチシール(マルチステッカー)を制作・活用しています。
例えば企業ロゴの入ったシールを配布すれば、企業名は消費者の間で自然に浸透するでしょう。マルチシールは、台紙の余白部分にも多彩なデザインを加えて印刷できるため、消費者に印象づけたい場合に効果的です。
マルチシールの主な用途をまとめると、以下のとおりです。
- ノベルティ
- 商品の購入特典
- 雑貨シール
- ご当地キャラ・名所・特産品シール
それぞれ詳しくみていきましょう。
ノベルティ
マルチシールは、企業のノベルティにも多く活用されています。シールのデザインに企業のキャラクターや企業ロゴなどを採用すれば、自社の強いアピールになるでしょう。
台紙の余白部分に企業名やブランド名、コンセプトなどを印刷すると、企業の想いや理念が伝わりやすくなります。素材や加工にこだわって耐久性を強化すれば、車のステッカーなどにも使用可能です。


商品の購入特典
マルチシールを商品購入の特典やおまけに付けるとお得感があるため、消費者の購買意欲が向上しやすくなります。
商品にちなんだキャラクターやロゴといったデザインを取り入れて特別感を演出すると、ファンは嬉しくなるでしょう。子ども向けの商品に付ける特典なら、可愛いキャラクターの描かれたおまけも喜ばれます。
このように、マルチシールのデザインは商品のターゲットに合わせたものにすると、高い効果が得られます。
雑貨シール
自社のオリジナルグッズとしてマルチシールを制作して、雑貨シールなどの名目で販売する方法も効果的です。実際に、ファンシーショップの雑貨コーナーで、さまざまなデザインの雑貨シールが販売されています。
例えば年末年始の時期なら、クリスマスや干支、お正月などをモチーフにしたシールがよく制作されます。学用品に貼れる「おなまえシール」や、「仕事」「休日」「旅行」などスケジュール帳に貼れる「予定シール」もマルチシールとしておすすめです。
ご当地キャラ・名所・特産品シール
マルチシールは、地域振興や町おこしと結びつけた事業・ビジネスにも活用できます。
ご当地キャラ(ゆるキャラ)をシールにしたり、名所や特産品をモチーフにしたデザインを取り入れたりすると、地域への親しみが沸いて観光PRにもつながるでしょう。
ほかにも、お土産品として販売する、お土産品購入時のおまけにするなど、幅広い用途で活用可能です。旅行・イベントの記念としてSNSに取り上げられる機会もあるため、自社のさらなる認知拡大やブランディング強化が期待できます。
マルチシールのメリット
上記のようにマルチシールはデザインが自由なため、ノベルティやおまけ、商品など多岐に渡って使用することができ、シールという特性から子供やコレクターなど様々なターゲットに向けて作成することができます。
オリジナルで作成する場合でも比較的コスト面も抑えることができます。ターゲットや用途に合わせて素材や加工を変えることもできます。
下記からは素材や加工に関しての色々な選択肢を記載しています。
マルチシール印刷の基礎知

マルチシール(マルチステッカー)を印刷する際に知っておきたい基礎知識として、素材と加工、形状を詳しく紹介します。
なお、オリジナルシール制作は小ロットで受け付けている印刷会社もあるので、基礎知識をもとにまずは1種類から依頼してみるのもよいでしょう。

素材
マルチシールの素材は、大きく分けて紙とフィルムの2種類です。
主な紙の素材として、以下が挙げられます。
紙の素材 | 概要 |
上質紙 | ・筆記がしやすくインキも馴染みやすい紙 ・おなまえシールをはじめ筆記できるシールなどに用いられる |
コート紙 | ・インキの発色に優れている滑らかな紙 ・色彩豊かなデザインのシールに用いられる |
アート紙 | ・半光沢で文字の視認性もある紙 ・光沢と文字の両方がデザインにあるシールなどに用いられる |
和紙 | ・独特の風合いが高級感を引き出す紙 ・和風デザインのシールや干支シールなどに用いられる |
主なフィルムの素材は、以下のとおりです。
フィルムの素材 | 概要 |
ユポ | ・耐久性・耐水性に優れた合成紙で、インキの発色も良い ・屋外で使用する可能性もあるロゴステッカーやノベルティなどに用いられる |
透明PET | ・耐久性・耐水性に優れたPET素材 ・下地が透けるため、貼付先のデザインを活かして紙とは違った表現が可能 ・封緘シールやロゴシールなどに用いられる |
アイディアとして、シール部分は紙素材にして、台紙に透明の剥離紙(表面を保護するために剥離剤でコーティングした紙)の組み合わせの素材を使用するといった方法もあります。これにより、シールの存在感を増大させる、見栄えを良くするなどの効果が期待できます。
マルチシールに向いている素材は多岐にわたるため、迷った場合は印刷会社に相談しましょう。



加工
マルチシールには、次のような加工が施せます。
加工 | 概要 |
ラミネート(PP)加工 | ・表面にラミネートフィルムをかけ、耐水性・耐久性を強化する ・光沢により高級感も得られる |
ハーフラミネート加工 | ・あとから文字を記載する部分を残して、ラミネート加工を施す ・おなまえシールなどに向いている |
再剥離 | ・一度貼っても剥がせるシールで、剥がしても糊の跡がつかない ・スケジュール帳のシールなど、あとで剥がす可能性があるシールに適している |
加工の種類によって得られる効果は異なるため、マルチシールに期待する効果に応じて加工方法を検討しましょう。


形状
マルチシールは、1つのシートに同じまたは異なるデザインが並んだ状態で仕上がります。
シールの形状は、丸や楕円、四角、星型などの形を選べるのが一般的です。シールのデザインに沿った形で特殊な変形カットも行えます。
印刷会社と相談しながら、形状をもとにシートのサイズやデザインの配置点数も決めましょう。
マルチシールのデザイン制作に関する注意点

マルチシール(マルチステッカー)のデザインのみを自社で制作する場合の注意点を紹介します。
まず、シールのカットライン(切り抜き線)は自社で入れておく必要があります。印刷会社はカットラインをもとにハーフカットを施すためです。
カットライン同士の間は、3〜4mmを目安に空けます。ただし、印刷会社から指定があれば、指定通りに対応しましょう。複雑な形状や鋭角型だと、カットが難しかったりシールを剥がす際に破れたりする場合があるため、注意が必要です。
また、透明や金銀などの素材にデザインを印刷すると、素材の色が透けてしまい、期待通りの仕上がりにならない可能性があります。そのため、白い素材に印刷したような発色に仕上げたい場合や、白の余白を表現したい場合は、下地としてホワイトインクを使用します。
その際、デザイン制作の段階からホワイトインクの使用箇所を指定する「ホワイトインクデータ」を作成するとスムーズです。詳しいやり方は依頼先の印刷会社に確認しましょう。
なお、自社でデザイン制作の対応が難しい場合は、デザイン制作も一貫して対応している印刷会社に依頼する方法もあります。
まとめ
マルチシール(マルチステッカー)は、企業のマーケティング強化やブランディングに役立つツールです。ノベルティや商品の購入特典、雑貨シールなど、活用の範囲は多岐にわたります。
マルチシールを印刷する際には、期待する効果やデザインに応じて、適切な素材や加工、形状を選ぶ必要があります。本記事を参考にして、自社の成長につながるマルチシールを制作しましょう。