食品衛生法に基づく正確な表示方法とは?食品に必要な法的表示について解説

食品衛生法、食品表示

消費者は食品に貼付されているラベルの内容を確認して、食品を購入します。食品ラベルは消費者が安全で健康的な食品を選ぶための情報が表示されており、その内容は食品衛生法における法的要件に沿ったものです。

今回の記事では、食品衛生法の基礎知識とともに、食品衛生法における適切な表示方法を紹介しています。食品のラベルに関して基本的な情報をチェックしたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

食品衛生法の基本的な表示要件

食品のパッケージに貼付されているラベルは、食品衛生法により厳格に定められています。食品衛生法の要件に沿って、以下の内容を解説します。

  • 食品衛生法に基づく表示内容
  • ラベルのサイズやフォントに関する法的要件

違反した場合は、行政指導を受けたり、行政・刑事処分等で刑罰が科せられたりするため、注意を払う必要があります。

食品衛生法に基づく表示内容

食品表示は食品の安全性や、消費者が食品を選ぶために必要な情報です。表示内容は以下、表の通りです。

項目表示内容
名称商品名ではなく、どのような食品であるかを判断できる原材料
添加物食品に含まれている添加物
アレルギー情報食品に含まれているアレルゲン(小麦、卵、乳製品、ナッツ類など)
保存方法品質を保つための条件(要冷蔵(10℃以下)など)
遺伝子組換え食品食品に含まれている対象の遺伝子組換え食品 (大豆、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしなの9作物とその加工食品)
製造者または輸入者の情報製造者もしくは輸入者の名前と連絡先
賞味期限または消費期限消費者が製品を安全に賞味または消費できる期限

そのほかに「保健機能食品」があります。保健機能食品は、特定保健用食品(トクホ)・栄養機能食品・機能性表示食品の3つに分類され、国が設けた基準を満たす食品に表示可能です。

ラベルのサイズやフォントに関する法的要件

食品衛生法に基づいてラベルに表示する情報は、消費者が読みやすい形で記載しなければなりません。記載に関する要件は以下、表の通りです。

項目内容
フォントサイズ8ポイント以上の大きさの活字
表示可能面積が150平方cm以下は、5.5ポイント以上の大きさの活字
フォントタイプ清潔で読みやすいフォントを使用
コントラストと色フォント色と背景色に十分なコントラストが必要

フォントタイプは読みやすさを重視して、装飾的なフォントや手書き風のフォントの使用は避けた方がよいでしょう。

食品衛生法に沿った印刷会社への具体的な表示指示

食品ラベルの印刷は、消費者保護と企業のブランド保全に直結しています。そのため、ラベルの作成を依頼する際は、印刷会社に的確な指示を出さなければなりません。

食品ラベルを作成する際に、印刷会社へ提供すべき主要な指示内容を解説します。

印刷における注意点とチェックリスト

食品ラベルを作成するには、法的要件を満たす必要があるため細心の注意が必要です。注意すべき要件は以下、表の通りです。

項目内容
フォントサイズの確認8ポイント以上のフォントサイズになっているか
色とコントラストの適用文字と背景に十分なコントラストがあるか
情報の完全性と正確性食品衛生法に基づいた必要な情報が含まれているか
成分、アレルギー情報、栄養成分表が正しく表示されているか
ラベルの配置と整列重要な情報が目立つ位置にあるか
原材料が正確に整列しているか
材料の選択使用する用紙やインキが安全基準に適合しているか
材料が環境条件に対して耐性を持っているか(耐水性、耐光性など)

正確かつ効果的な印刷を保証するために、チェックリストを使用して表示漏れがないかを確認してください。

表示内容の正確性を確保するための技術的な要求

食品ラベルの表示内容の正確性は、消費者の健康と安全を守る上で極めて重要です。この正確性を確保するために、印刷会社は技術的な要求を満たす必要があります。

ラベルに使用される印刷技術は、高解像度でなければなりません。これは、細かい文字も鮮明に再現できるようにするためです。高解像度の印刷は、特に小さな文字が多用される栄養成分表や成分リストにおいて、読みやすさを大幅に向上させます。

さらに、ラベルは水や油、摩擦などさまざまな外部条件に耐えうる材質で印刷される必要があります。これは、情報が商品の保管や輸送中に損なわれないようにするためです。特に、冷凍食品や屋外での使用が想定される製品の場合、冷凍に耐えるラベル素材や粘着剤を選んだり、屋外の環境にも耐えるインキや素材を選んだり、選定が重要です。

食品衛生法の改正内容と企業への影響

食品産業は常に進化しており、それに伴い食品衛生法も定期的に見直されています。最新の法改正は、消費者の健康と情報の透明性向上が目的です。

これらの改正が食品ラベルにどのような影響を及ぼすかを解説します。

最近の食品衛生法の改正内容

食品業界の進化は著しく、その変化に応じて食品衛生法も定期的に更新されます。

アレルゲン表示は詳細化の傾向にあり、食品表示基準の一部改正により2023年3月9日から「くるみ」が特定原材料に追加されました。これまでのリストに加え、痕跡量(こんせきりょう:計算をする際に含めなくてもよいくらい微量)であっても、食品に含まれる可能性があるアレルゲンは明記する必要があります。

また、2020年4月1日から新たな食品表示制度が完全施行となり、栄養成分表示が義務化されました。糖質や特定のビタミン、ミネラルの表示が義務付けられるケースが増えています。

改正内容を遵守できていないと、健康被害のようなトラブルが発生するリスクが増大します。最新の法改正に沿った内容になっているかを必ずチェックしましょう。

食品表示による企業への影響

2015年に施行された「食品表示法」により2020年4月以降、新食品表示制度に移行しなければなりません。「食品表示法」は「JAS法」「食品衛生法」「健康増進法」の3法の食品表示に関する規定を整理、統合した法律です。移行する項目は「加工食品と生鮮食品のJAS法に基づく区分に統一」「製造所固有記号のルール改善」などを含む計11項目です。

食品表示法で定めたルールに違反した食品メーカーなどは、重い罰則や罰金が科せられます。そのため、法の改正とともに企業は柔軟に対応する姿勢が求められるでしょう。

ラベルの表示内容との整合性を管理する体制の強化や、改正のたびにラベルの印字内容を変更できるよう企業と印刷会社との調整も必要です。

食品衛生法に沿った限られたスペースでの表示方法

食品パッケージのスペースは限られており、法的に必要な情報をすべて掲載するには工夫が必要です。限られたスペースに法的要件を満たしつつ、消費者へ必要な情報を提供する方法を紹介します。

多層ラベル

食品ラベルには、多くの情報を記載しなければなりません。しかし、パッケージに記載できるスペースは限られています。必要な情報を記載するためにも、デザインの工夫が不可欠です。

一つのラベルで複数ページにわたる情報を表示したい場合は、多層ラベルという選択もあります。限られたスペースで必要な情報すべてを含められ、追加情報の表示も可能です。

多層ラベルは、以下のような種類があります。

  • 折りたたみ式または引き出し式
  • ボトルなどの首にかけるタイプ
  • 二層式のシール
  • ハガキ付き など

また、広くなったスペースには、多言語での取扱説明書や注意書き、レシピ紹介、キャンペーン告知などの情報を表示できます。

QRコード

食品ラベルに記載した情報のほかに、製品の原産地や食品の加工方法などの追加情報を提供したい場合は、QRコードも活用できます。

QRコードやWebサイトのURLをラベルに表示すると、詳細情報にアクセスできる手段を提供できます。これにより、消費者が追加情報を必要とする際は、オンラインで容易にアクセスが可能です。

まとめ

食品ラベルは食品衛生法や食品表示法に基づいた内容にするだけでなく、消費者に安心して購入してもらうためにも重要なものです。また、法改正により表示内容が詳細になっているため、より見やすくわかりやすいデザインと工夫が求められています。

食品ラベルの正確で透明な情報提供は、健康志向の高まる現代社会において重要な責任であり、企業にとって大きな機会であるといえるでしょう。

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