「食品表示法に基づく義務がわからない」「食品表示ラベルを正しく効率的に作りたい」などの悩みをお持ちの企業担当者の方もいるのではないでしょうか。
消費者に販売する食品を扱う事業者は、法律に定められたルールに沿ってラベルを制作する必要があります。
本記事では、食品表示法に基づく義務の内容や、食品表示ラベルを制作するポイント、注意点などについてわかりやすく解説します。自社商品のラベルをスムーズに制作するため、ぜひ最後までご覧ください。
※本記事は2024年8月時点の公表情報をもとに執筆しています。最新の制度の内容は、消費者庁のホームページを併せてご確認ください。
食品表示法とは
食品表示法とは、消費者の安全確保や健康増進などを目的に、食品の表示ルールを一括的に定めた法律です。
食品の表示については、もともと食品衛生法とJAS法、健康増進法に分かれてルールが規定されていましたが、2013年にそれらの法律が定めていたルールを一元化することで食品表示法が成立しました。
食品表示法は、製造者や加工者、販売者などの関連事業者に対して、食品に関する表示を義務づけています。細かいルールは同法に基づく「食品表示基準」に規定されており、基準に沿って商品に添付するラベルは「食品表示ラベル」と呼ばれます。
もし事業者が義務に違反すると、罰金などの法的な責任を負うだけでなく、消費者の健康を大きく害することにもつながりかねません。ルールを正しく理解して、ラベルを適切に制作する必要があります。
参照:消費者庁「食品表示法の概要」
参照:消費者庁「食品表示法等(法令及び一元化情報)」
食品衛生法に基づく表示のルールはある?
食品衛生法とは、飲食を通じた健康被害を防ぐための法律であり、食品の管理方法や添加物の使用基準などのルールが記載されています。
前述のとおり、食品の表示に関するルールは食品表示法に一元化されているため、食品衛生法には表示に関する細かい基準が定められていません。
しかし、食品衛生法の第20条には、食品に関して「公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしてはならない」との規定が残っています。
そのため、事業者はこの規定の趣旨を踏まえて、食品表示ラベルの内容を検討する必要があります。
参照:厚生労働省「食品衛生法の改正について」
参照:e-Gov法令検索「食品衛生法|第20条」
食品表示法に基づく義務
食品表示法と食品表示基準に基づく義務について、具体的な記載項目と記載方法のルールに分けて重要なポイントを解説します。
なお、食品表示法は消費者に販売するすべての食品を対象としており、食品は加工食品と生鮮食品、添加物に分けられています。分類ごとに細かいルールがあるため、本記事と併せて消費者庁のホームページや資料をご確認ください。
また、公表情報でわからないことがあれば、管轄の保健所や消費者庁へ問い合わせると、制度に関するくわしい回答を得られます。
記載項目に関するルール
食品表示基準には、食品ごとに記載すべき項目が詳細に定められています。食品表示ラベルを用いた一括表示により、容器の見やすい箇所に各項目を記載する必要があります。
例として、食品表示基準の参考様式にある記載項目の一覧は、以下のとおりです。
項目 | 内容 |
名称 | 食品の内容を表す一般的な名称を記載する |
原材料名 | 原材料を重量の割合が高い順に記載する |
添加物 | 添加物の物質名・用途を重量の割合が高い順に記載する |
原料原産地名 | 重量の割合が最も高い原材料の産地を記載する |
内容量(固形量・内容総量) | ・重量や体積、個数等に単位をつけて内容量を示す ・固形物に充てん液を加えて密封している場合、固形量と内容総量も示す |
消費期限(賞味期限) | 品質が急速に劣化しやすい場合には消費期限、それ以外の場合には賞味期限を記載する |
保存方法 | 開封する前の保存方法(「直射日光を避けて、常温で保存する」、「10℃以下で保存する」など)を記載する |
原産国名 | 輸入した加工食品の場合、どこの国から輸入したかを記載する |
製造者 | 製造業者の名称や住所を記載する |
ほかにも、消費者向けの加工食品には、熱量やタンパク質、脂質などの栄養成分表示が義務づけられています。さらに「保健機能食品」として、特定保健用食品(トクホ)・栄養機能食品・機能性表示食品の3つがあり、国が設けた基準を満たす場合に名称を記載します。
また、食品表示基準では、実際の商品より著しく優良か有利であると誤認させる記載や、産地名を誤認させるような記載が禁止されているので注意が必要です。
以下の消費庁のガイドには、食品の種類ごとにルールがわかりやすく記載されているので、併せて参考にしましょう。
参照:消費者庁「早わかり食品表示ガイド(令和6年4月版・事業者向け)」
参照:消費者庁「初めて栄養成分表示をする方へ」
参照:消費者庁「保健機能食品について」
参照:e-Gov法令検索「食品表示基準」
記載方法に関するルール
食品表示基準には、食品表示ラベルの記載項目だけではなく、記載方法について細かいルールが定められています。ルールの例としては、以下のとおりです。
- フォントサイズは、8ポイント以上の大きさにする(※)
- 項目の文字や枠の色は、背景と対照的な色で見やすくする
- 包装を開かないでも簡単に見られる箇所に記載する
※表示可能面積が150平方センチメートル以下の場合は、5.5ポイント以上
ただし、上記はあくまで原則であり、食品の種類や記載内容ごとに、別途異なるルールが定められている場合があります。
消費者庁のガイドのほか、各地方自治体がルールに関するチェックリストを公表している場合があるため、自社にとって使いやすいものを活用するのがおすすめです。
参考:e-Gov法令検索「食品表示基準|第8条」
食品表示法と食品表示基準の改正内容に注意が必要
食品表示法と食品表示基準は随時改正されており、事業者は改正内容に沿って適切に対応する必要があります。特に、食品表示基準は例年細かく改正されているため、自社の商品が改正に該当しないかどうか注意が必要です。
例えば、2023年3月の改正では、食物アレルギーにかかわる原材料としてこれまで任意の記載とされていた「くるみ」について、専門家の意見を踏まえて、表示が義務化されました。2025年3月31日までが経過措置の期間であり、それ以降は表示をしないとルールに違反することになります。
改正内容は消費者庁のホームページにて公表されるため、随時チェックして対応する必要があることは押さえておきましょう。
参照:消費者庁「食品表示|新着情報」
参照:消費者庁「これまでの食品表示基準の改正概要について」
食品表示ラベルの制作は印刷会社へ依頼する方がいい?
食品表示ラベルは、法律や基準の内容を押さえて、ラベルプリンターなどを使用すれば自社での制作が可能です。
自社で制作するメリットは、必要なタイミングで必要な分をすぐに印刷できることです。そのため、食品表示ラベルを変更する頻度が高い場合などに向いています。
一方、印刷会社へ制作を依頼すると、特に小ロットの場合は自社で作るよりもコストが高くなりがちですが、品質面では優れている傾向があります。主なメリットは、以下のとおりです。
- 水や油、摩擦などに耐えうるシール素材や粘着剤を使用できる
- 耐候性や耐水性のあるインキを選べる
- 高解像度で、細かい文字を鮮明に再現できるプリンターで印刷できる
- 法律の要件に沿った印刷を任せられ、より良いデザインの提案を受けられる
特に、冷凍食品や屋外での使用が想定される商品の場合、耐久性のあるラベルを作成した方が貼り直しのリスクを抑えられ、長い目で見ればお得になる可能性があります。
ただし、すべての印刷会社に食品表示ラベルの制作実績やノウハウが豊富にあるわけではないため、事前の問い合わせが必要です。
ラベルの品質にこだわる場合には、印刷会社への依頼を検討してみましょう。
食品表示ラベルの記載を見やすくする工夫の例
食品表示ラベルのスペースは限られており、法律により記載が義務化された情報をすべて掲載するためには、デザインの工夫が必要です。
以下では、多層ラベルとQRコードという二つの工夫の例を紹介します。
多層ラベルを取り入れる
一つのラベルで複数ページにわたる情報を表示したい場合は、多層ラベルを取り入れるのが効果的です。限られたスペースに必要な情報をすべて含められ、追加情報も記載できます。
多層ラベルには、以下のような種類があります。
- 折りたたみ式または引き出し式
- ボトルなどの首にかけるタイプ
- 二層式のシール
- ハガキつき
広くなったスペースには、多言語での取扱説明書や注意書き、レシピ紹介、キャンペーン告知などの情報を記載できるのもメリットです。
QRコードを活用する
食品表示ラベルに一括表示で記載した情報のほかに、生産者のくわしい情報や食品の加工方法などの追加情報を提供したい場合は、QRコードも活用できます。
QRコードやホームページのURLをラベルに記載すると、詳細情報にオンラインで容易にアクセスできる手段を提供可能です。遷移先のホームページでキャンペーンや割引情報などを掲載すると、売上のさらなる向上にもつながります。
まとめ
食品を扱う事業者は、消費者の安全を確保するために、食品表示法に基づく記載項目・方法などの義務を遵守する必要があります。制度の改正内容にも留意しながら、わかりやすいデザインの食品表示ラベルを制作することが重要です。
読みやすく耐久性が高い食品表示ラベルを制作したい場合には、実績のある印刷会社への依頼も検討してみましょう。